【子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー】第414回「寿限無 寿限無 五劫の摺り切れ…」
子どもの虐待がマスコミを賑わすようになってから久しいですが、そんな虐待事例を除けば、親は子どもを目の中に入れても痛くないと思うほどかわいいと思うもの。そんな感覚も、時代と共に薄れているようには感じますが、あまり変わってほしくない価値観ですね。
子どもが生まれてからまず最初の親の仕事といえば、名前を付けること。これには皆さんけっこう苦労したんじゃないですかね。夫婦で意見をすり合わせて、なんとか決まったかと思うと、今度はおじいちゃんが猛反対とか…。(我が家の命名事情については第66回参照)
どうですか?
そんな経験ありませんか。
名前を決めるときに何を大切にするかっていうのは、それぞれの親の価値観によって決まりますよね。海外の経験が長かったり、これからはボーダーレスの時代と思う人は、外国人も呼びやすい名前。サラ、エミ、エリ、エミリー、ジョー、ジョージ、ショー、シンみたいな音を漢字にしたり、日本人的な名前が好きな人は、あえてお尻に「介」を付けたり「郎」を付けたり、雄大さ、強さ、美しさなんかにこだわれば「海」だったり「拓」だったり、「香」だったり、「翔」だったり…。どうも私の想像力は乏しいらしくて、家族やどこかで関わった人の名前からしか思いつかないなあ???
ちょっと情けないですね。
さて、「寿限無」に出てくる父親(八五郎)とおかみさんは、『達者で長生きができてさ、おまんまの苦労をせずにすむような名前』と考えて、旦那寺(菩提寺)の和尚さんに名前を付けてもらうことを頼みます。そして和尚さんがいくつかあげてくれたのが、有名な「寿限無 寿限無 五劫のすり切れ…」。和尚さんは一つ一つ別の候補のつもりであげたのに、八五郎さんとおかみさんは一つに絞りきれずに「今はこれがいいと思ってもさ、あとであっちにしときゃ良かった、こっちが良かった、なんて思うにちげぇねぇんだ。だからさ、いっそのこと、これ残らずぼうずの名前にしちまおう」と全てを名前にしてしまったわけです。
『寿限無、寿限無、五劫の摺り切れ、海砂利水魚の水行末、雲行末、風来末、食う寝る所に住む所、薮ら柑子のぶら柑子、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助』
こりゃ長い!
落語の落ちは、「誤って井戸に落ちた長助を助けようと、名前を呼んでいるうちにおぼれ死んでしまう」というものや「喧嘩してこぶができた長助の名前を呼んでいるうちに、こぶが引っ込んでしまった」というもの、「新学期が始まり友達が一緒に学校に行こうと長助を迎えに行ったのに、朝寝坊の長助の名前を呼んで起こしているうちに夏休みになってしっまった」というものなど、いろいろあります。
親の心理をついたおもしろい落語ですよね。最近、文科省が仕掛けているのか、NHKなどでも、落語をはじめとした言葉遊びや短歌、俳句などが子ども向けの番組で扱われるようになりました。この「寿限無」は教科書にも載っていたのでびっくりしました。孫が見ている番組を一緒に見ていると引き込まれてしっまって、孫より私の方が夢中になってしまったりして…。
孫の蓮がテレビの番組を録画したらしく、何遍も同じ番組がテレビに流れていることがありました。声を聞いていると、何となく聞き覚えのある声。
「あれ?」
「そうだよ、E君のお父さんだよ」
蓮の幼稚園の同級生のお父さんは真打の落語家「立川談慶」さんなんです。南区に住んでいるんですよ。子ども向けの番組に出ていたので驚きました。
カウンセリングをやっていると、言語、非言語の大切さを痛感します。落語っていうのは言語、非言語の原点ですね。子どもとの関わりの中でも参考になることがたくさんあります。8月にその談慶さんをお招きして親子で楽しめる落語の会を開くことになりました。もし、興味があったら来てください。
最近子どもの番組で取り上げられているのとは反対に、大人向けの本格的な落語の番組がほとんど無くなってしまったように感じます。言葉の大切さやおもしろさを子どもたちにもしっかりと伝えたいですね。
2010/07/12(月)
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、地域情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。
掲載された元のページも現在ご覧いただけるようになっています。
https://www.amatias.com/bbs/bbs_list.asp?current_page=50&forum_id=13


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