【子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー】第500回(最終回)「蓮くん、我が家に戻る!」
「蓮はどうしたいの?」
「この前、電話で話した時は、帰るって言ってたよ。でも、まだ気持ちが揺れてるみたいだね。蓮以外の4人の男の子のうち、担任の先生のお子さんは先生の移動でどうなるかわからないんだけど、後の3人の男の子は島に残ることに決めたんだって。それを聞いたら、戻るって決めてた蓮の気持ちも揺れちゃったみたいよ。学年は違うけれど、蓮が一番下で、みんな弟みたいにかわいがってくれてたから。レストランもない、コンビニもない、お店もない、レジャー施設もない、とにかく何にもない中で、島の人たちの心の温かさはどこにもないくらいいっぱいだから、蓮にとっては新鮮で、居心地もよかったんだと思う」
「やっぱり、迷うだろうなあ…」
「そうよね」
昨年の4月に「鹿児島県鹿児島郡十島村平島」(としまむらたいらじま)(http://www.tokara.jp/index.html)に留学した孫の蓮は、1年間の留学を終え、我が家に戻ってくることになりました。留学の仲介をしてくださった十島村教育委員会の教育長さんをはじめ、教育委員会の皆さん、蓮を温かく迎えてくださった平島の皆さん、そして里親を快くお引き受けくださった日高さんご一家にはお礼の言い様もないくらい感謝しています。
1年間、平島小中学校の最上級生として蓮の面倒を見てくれた日高さんのお嬢さんも、無事鹿児島市内の高校に合格し、4月から自宅を離れ新たな生活の一歩を歩み始めたそうです。
まさか孫の蓮がこのような出会いを作ってくれるとは…
「ばあちゃん!? 今、鹿児島に着いたよ。今日帰るからぁ!」
妻と携帯電話で話す蓮の声が、隣にいた私にも聞こえてきました。平島に渡った時、弾んだ声で電話をかけてきた蓮。1年前と同じように、鹿児島からの声は弾んでいましたが、その声の調子からは1年前とはまったく違う、成長した蓮を感じ取ることが出来ました。
3月29日午後8時40分羽田着。
「蓮、おかえりー!」
「ただいまー!」
蓮が帰ってきました。お正月にも戻ってきてはいたのですが、帰宅を決心して戻ってきた蓮には、親元を離れ1年間一人で平島で過ごした自信のようなものがみなぎっていました。
この1年間の経験は、蓮にとっても、母親の麻耶にとっても、妹の沙羅にとっても、そして私たち祖父母にとっても、大切で貴重な経験になりました。
蓮が戻った翌日、妻が食卓の上にあるビニール袋を手にとって、
「これ、なあに?」
と聞きました。
「それ、するめだろ?この前、原山のばあさん(私の母)がよこしたの」
「これがぁ?」
不審そうに妻が袋から取り出したものは、40センチくらいの白い板のようなもので、ラグビーボールをつぶしたような形をしています。
「あれっ? 違う違う。それはどう見てもするめじゃない。それ、何っ?」
と私が言うと、遠くの方から蓮が、
「イカの骨だよ」
イカの骨かあ…。こんなもん、見たことない!
そういえば、平島から釣り上げたイカの写メを送ってきたことあったっけ。
「10キロ以上あるんだよ」
蓮が言いました。
私がしたこともない経験を小学4年の蓮がしてきたんだなあ、とつくづく感心しました。
子どもや孫の成長は私たち大人の想像をはるかに超えています。子どもが自ら育つ力を信じ、そっと見守ることが子育てなんですね。
昨年から我が家にはいろいろな動きがありました。長男の努は、20年間所属していたオーストリアやドイツの市立劇場の舞踊団を退団してフリーになり、三男の翔は、初めて日本アマチュアゴルフ選手権の決勝ラウンドに進み、国体での団体優勝も果たしました。そして、今日、4月1日は、昨年32歳になった娘の麻耶が3月に大学を卒業し、新たな一歩を歩み始め、孫の蓮は前述の通り…。
そして私は、10年、500回を迎えた連載を終え、今日、ペンを置くことにしました。いや、パソコンを閉じることにしました。かな?
ご愛読いただいた皆様、本当に長い間ありがとうございました。
また、違った形でお目にかかれる日が来ることを楽しみにしています。
よしっ! 連載も終わったことだし、明日から長~い旅に出るぞーっ!
2泊3日ですけどね!
それでは、(⌒∇⌒)マタネー!!
完
2012/04/09(月)
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、地域情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。
掲載された元のページも現在ご覧いただけるようになっています。
https://www.amatias.com/bbs/bbs_list.asp?current_page=50&forum_id=13


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