2022年4月29日 (金)

【子育てはお好き? -専業主夫の子育て談義-】第262回「父子家庭の増加」

「おまえ、今どんな生活してんの?」
「ん、オレ? オレはね、息子と二人暮らし。高校生の息子と二人で住んでんだよ。息子ってかわいいよなあ。ほんと、もうかわいくってさあ!」
「!? ほんとに高校生の息子と二人で住んでるの?」
「ん、そうだよ。ずっと。もう10年かな」
「父子家庭?」
「そう」
「なんで?」
「んー、なんでって言われてもなあ…。別れちゃったからさあ。子ども渡すのイヤじゃん。やっぱさあ、育てたいじゃん。オレの子だよ。それに、なんかさあ、奥さん、子ども育てたくなさそうだったんだよなあ。だから、引き取ったんだ。でもね、最近親離れって言うかなあ、そろそろもう大人だろっ。ちょっと寂しいよ。けっこう仲のいい親子なんだぜ」
「へーっ! おまえってさあ、高校時代から変なやつだったけど、ますます変なやつになってるなあ!」
「そう? オレはオレ。昔からそうだったんじゃん。あんまり、変わってねえよ」
今から4年ほど前のことです。20数年ぶりに会った同級生のK君から、一人で息子を育てているという話を聞きました。彼は、高校1年生の時のクラスメイトで、特別仲がいいというほどの関係かと言えば、そういうわけではありませんが、どういうわけか話をしていると、気持ちがスッと通じるところがあると言うか、そんな感じの変な友人です。私は、自分から積極的に“友達を作りにいく”というような性格ではないので、男友達と一緒に何かをしたという経験は皆無なのですが、このK君とだけは、高校1年生の時参加した伊豆大島への地学巡検(火山や地質、地層などの学習のため、地学の授業の一環として1年生の希望者が参加して毎年行われていた学校行事)で、丸3日というもの自由に行動できる時間は、すべて二人で行動していたという経験があります。牧場で牛乳を飲んだり、整髪に使う椿油を買ったり、三原山を二人で駆け下りたり、溶岩の色が反射して真っ赤に染まった雲を眺めたり…。今から30年以上も前のことですが、私はあまりそういう付き合い方をする方ではないだけに、大島で過ごした3日間は今でもよく覚えています。
その頃は、別にそれほど仲がいいというわけではないのに、どうして気持ちが通じるのかよくわかりませんでしたが、父子家庭で長く過ごしているという彼の話を聞いて、「子どもに対する思い」という点で、かなり価値観の近い部分があって、そういうところが私と彼をつなげているんだなあと、えらく納得がいきました。
彼の話は4年前のことですが、昨日(10日)ネットに、「『シングルファーザー』急増のわけ」というタイトルのニュースが流れてきました。総務省のデータによると、幼い子どもを抱える49歳までのシングルファザーは、05年に20万3000人で、00年からの5年間で、1万2000人も増えたそうです。
理由は、離婚が15万7000人、死別2万7000人、未婚1万9000人。もちろん離婚が最も多いわけですが、“未婚の父”がこの5年間で4割以上も増えたそうです。
“未婚の母”っていう言葉はよく使うけれど、“未婚の父”とは…。
シングルファザー支援に取り組む横須賀市議の藤野英明氏は、
「育児放棄が社会問題となっているように、子育てできない女性が増えているのが大きい。私がかかわった共働きの公認会計士とスッチー夫婦は、妻が『子育てにのめり込めない』と言い出したため離婚した。また、男性にも『パートナーはいらないけど、子どもはほしい』という考えが広がっているせいもあるでしょう」と言っているそうです。
私のあまり好きではない本に「父性の復権」なんていうのがあったけれど、近いうちに「母性の復権」なんていう本が登場するかも…。いやいや、もしかして、もうある?
今、ネットで調べたらもうありました! もっとも、「父性の復権」も「母性の復権」も“林道義”著でしたが。
私は、母親が失ってしまった母性を父親が補うのは大いにけっこうと思います。けれども、子どもを一人の人間として扱わず、まるでペットのように扱う母親のように、子どもを一人の人間として扱わず、まるでペットのように扱う父親が増えてしまうことを懸念しています。両親揃って子育てができることに越したことはないけれど、様々な事情で一人親家庭になってしまった場合でも、大人のエゴによって、子どもが不幸になることがないよう子どもの権利をしっかりと守った子育てをしたいものですね。

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、地域情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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2021年12月 6日 (月)

【子育てはお好き? -専業主夫の子育て談義-】第204回 「大倉浩弁護士来る!」

ここのところほぼ月1回のペースで行っている「カウンセリング特別講座」に地元浦和で弁護士としてご活躍の“大倉浩”先生にご登場願いました。
大倉先生のご実家と私の実家はすぐそば。大倉先生の方が私より1歳年上ですが、赤ん坊のころからの関係で、原山中学校でもバレー部の先輩、後輩でした。もちろん家族ぐるみで親しくさせていただいていたわけですが、大倉先生のお父上が浦和市の総務部長をなさったあと、私の父も総務部長をさせていただいたという関係もあってか、父もプライベートなことでいろいろとお世話になっているようです。
つい先日まで、私の会社と清水建設との間で争っていた、研究所(エイペックスタワー浦和西館7階)の雨漏りによる損害賠償請求事件でも、私の会社の代理人になっていただきました。
少年事件を数多く手がけていらっしゃる関係もあり、研究所開設当初より、特別講師としてお名前を連ねていただいていましたが、やっと今回講座をお願いすることができました。

たはっ、どうも大倉さんの話を一生懸命敬語を使って話そうとすると、頭が混乱してきちゃうなあ。子どものころから“ヒロシくん”“なおちゃん”の関係だったので、中学校で先輩、後輩になったときも、かなり混乱はあったんですけど、今回も結構混乱しちゃってます。
まっ、そういうわけで、大倉さんに講師をお願いしたわけです。
弁護士という立場で、少年事件に関わった話を聞く機会というのは、そう多くはないので、今回の講座はとても有意義なものになりました。大倉さんの人柄ということもあるのかなあ???子どものころからとにかく真面目で、熱血漢。正義感はめっぽう強いし、しかも涙もろいときてる。今回も、2時間の話の中で何度涙を流したことか。
おもしろかったのは、映画「戦場のピアニスト」を見たときの話。なんと、映画の中の主人公が撃たれそうになったとき、思わず「あぶない!」と叫んじゃったとか…。たぶんどこかの映画館での話じゃないかと思うけど、普通の人じゃあ考えられない。でも、講座に参加してた人たちは、ぼろぼろ涙を流す大倉さんを見て、おそらくすごく納得がいったんじゃないかな。小さいころから彼をよく知っている私としては、“いやーっ、ヒロシくんらしいなあ”と思うわけです。
そんな大倉弁護士が、少年事件について強く語っていたのは、“事件は子どもたちのせいじゃない”っていうこと。事件の責任は、事件を起こした子どもたちを取り巻く大人の責任であるということを力説していました。もし、事件を起こした子どもたちが、違った親、違った環境で育てられていたら、事件は起こさなかった。愛情のない家庭の中で育てられて、事件を起こしてしまった子どもたちも、愛情のある家庭の中で生活することで、更生できる。実際に少年事件に関わっている大倉さんの話には、大きく心に響くものがありました。
うちの研究所を訪れる多くの子どもたちも、皆とても優しく、いい子たちです。そういう子どもたちが、問題を抱えて苦しんでいる。そんな苦しんでいる子どもたちにさらに負担を掛けるのでなく、周囲の大人が責任を負ってあげることでどれだけ子どもたちが楽になることか。
人間は他の動物に比べて未熟で生まれてくる。未熟で生まれてくるからこそ、人間なんだ。オオカミに育てられたという“カマラ”と“アマラ”のことを思い出しました。
う~ん、親は親としてきちっと責任を全うしなくては…。
親の責任、大人の責任を痛感させられる大倉弁護士のお話でした。

 

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2019年11月 6日 (水)

【「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」第128回】「個性」

「弥生ちゃん、何それ?!」
「まんば」
「???」
「知らないんですか? やまんばメークのことですよ」
「???」
「だからさあ、こういうメークのことをやまんばメークって言うの。最近はねえ、それを“まんば”」
「ガハハハハッ、なるほどね! でもさあ、どうしてそんなふうに塗りたくっちゃうの?」
「だって、この方がかわいいじゃないですかあ!」
「そーおっ?」
「うん、絶対この方がかわいい」
「そうかねえ? なんにもしてない弥生ちゃんの方が弥生ちゃんらしくてかわいいんじゃないの?」
「えーっ?! 全然お化粧しないってことですか? すっぴんなんて恥ずかしいですよ」
「そうかなあ??? 私はそんなことないと思うけどぉ」
「すっぴんなんて、ありえない、ありえない、ありえない! ちょー恥ずかしいもん」
「そうなんだぁ?! なんか“まんば”の方が恥ずかしそうだけどね。弥生ちゃんだかだれだかわかんなくなっちゃうじゃない?」
「そうですかあ? ほらほら、ここの所をこういう風にやって個性出してるんですよ。いろんな風にできるじゃないですかぁ。すっぴんなんて絶対考えられない」
「ずっと“まんば”やってるの?」
「それはないですよ。大人になってこんなことやってたら、今度逆に恥ずかしくないですか? だから今しかできないんですよ。だから、今の高校やめて“まんば”やれるところへ移りたいわけ。ほら、この雑誌に出てる子、××高校って書いてあるでしょ。こっちの子は××高校。ウチの学校だと髪の毛染めるの禁止で、ちょっとでも黒じゃないとちょーうるさいしぃ…。うざい!」

弥生ちゃんは私立高校に通う16歳。“やまんばメーク”をするために高校を替わりたいと言っています。弥生ちゃんと会ってから、テレビの“まんば”の番組を見てみました。“まんば”という1つの風俗は、それ自体かなり強烈な個性を持っているのに、その番組に出ている子たちを見てみると、どの子が誰で誰がどの子かよくわかりません。“まんば”という強い個性がそれぞれの持つ個性を消してしまって、“××さん”という個人が“まんば”という集団に呑み込まれてしまっています。

「私、雑誌に載ったんですよ。ほらっ、このページ。私、どれだかわかります?」
50人あまりのやまんばメークの女の子たちがその雑誌の編集部を訪れたときのスナップ写真と集合写真が見開き2ページにたくさん載っています。
「うーん…」
なかなか見つけられずにいると、早く見つけてほしい彼女が、
「ほらっ、ここ!」
と指をさしてくれました。
「ほんとだ!」
その写真を指さされても、「これえ?」っていう感じだった私は、
「まだ載ってるよ。あとはどこだかわかる?」
という彼女に促されて、指さされた写真と同じ服装をした子を必死に探して、
「見つけた! ほら、これとこれ! あっ、ここにも映ってる!」
すると弥生ちゃんはビックリして、
「あっ、ほんとだ! 気がつかなかった!」
たった見開き2ページの中に映っている自分が見つけられない個性の無さ。自分をアピールしようとして個性をなくしてしまっている矛盾と滑稽さ。
「この前、まんばの番組見たよ。なんだかみんな同じに見えた。まんばの子ってみんな優しいんだなって思ったよ。あんなに個性的なカッコしてるけど、ほんとはみんな自分をさらけ出すのが苦手なんじゃないの? だからきっと自分を隠すためにあんなに塗りたくってるんだよね」
「そうかなあ? でも確かにそういうところはあるかも…」
自己主張をすることでかえって自己主張を消している、そんな状況に弥生ちゃんも考え込んでいました。


**9月27日(月)掲載**

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。
 

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