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2022年4月30日 (土)

【子育てはお好き? -専業主夫の子育て談義-】第269回「家族って何?」

ドイツ・ミュンスターの市立劇場で専属ダンサーとしてモダンダンスを踊っている長男・努(つとむ)が3年ぶりに、夏の休暇を利用して帰ってきました。前回、一時帰国したときも、ここに登場させたような気がしたのでバックナンバーを調べていたら、なんと「第120回」(ちょうど3年前だから当たり前だけど)。「早いもんだなあ」というか「ずいぶん長かったなあ」というか…。私とは12歳違いで、12月で38歳になります。19歳で渡欧して、一時期日本に戻ったこともありましたが、20年というもの、ほとんどヨーロッパ暮らしです。
前回の帰国は4年ぶりでした。そして今回は3年ぶり。1年というのは長いようでそれほど長いわけではなく、その1年の間に何か大きなことが起こるというのは事故でもない限り少ないのですが、3年、4年というのは、短いようで長くて、その3年、4年の間に、生活に大きな変化が起こったりします。前回努が帰国したときは、努がドイツにいるうちに、妹の麻耶が結婚し、二人の子どもを出産し、そして離婚をし、家に出戻っていました。努にとっても、麻耶の子どもたちの蓮と沙羅にとっても、初めて会うわけですから、ちょっとくらいは人見知りでもするのかなあと思いきや、会ったとたんに蓮も沙羅も努にべったり。伯父さんと甥・姪の関係ってこんなもの?とびっくりしました。
そして今回の帰国までの3年間に、祖父と祖母の二人が亡くなってしまいました。前回の帰国の時には、一緒に海水浴に行ったのでしたが、その約1年後に祖父、さらにその1年後に祖母。努の意識の中には、一緒に海水浴に行った元気な祖父と祖母のイメージ(とはいえ、その時すでに祖父は91歳、祖母は88歳でしたから、次回帰国の時には、二人とも亡くなっているかもしれないという気持ちもすでにあったと思いますが)があったのでしょう、翌年、祖母が亡くなったことをメールで知らせると、大きなショックを受けた様子のメールが返ってきました。
そして次の年、祖母の死を電話で告げられた努が返した言葉は、
「次はお母さんかあ…」。
その時はみんな、努の言葉をとても唐突な、大げさな言葉として受け止め、
「まったく何言ってんだろうね、努は!」
と、あまりにも飛躍したと思える努の言葉を、ちょっとバカにした感じで受け止めていたのですが、今回戻ってきた努に翔が「次はお母さんかあ…」の受け止め方の話をすると、「お前たちはさあ、いつもそばにいるだろっ。だからわかんないんだよ。ずっと離れていてみろっ。おじいさんが死んで、おばあさんが死んで、次はお母さんかあって、必ず順番考えるから!」
と努は言いました。
努が成田に着いた6月25日には、私の父がかなり悪い状態でした。私の父と努とは血のつながりはないわけですが、成田に着いたその足で私の実家へ寄った努は、疲れを口にすることもなく、父の介護の手伝いをしてくれました。休暇で、身体と心を休めに帰国したはずの努でしたが、私の父が亡くなるまでの10日間というもの、とても積極的に父の介護にかかわり、看取ってくれました。義理とは言え、努にとって「おじいちゃん」と呼べる最後の存在であった父の最期を見届けることで、実の祖父母の死に立ち会えなかったという自分の気持ちの寂しさを、少しでも埋めようとしているようでした。
「せっかく休暇で帰ってきて、楽しい夏休みを過ごそうと思ってたんだろうに、父のことで休暇の半分を使わせちゃって悪かったねえ」
と私が言うと、妻は、
「いいんじゃないの、あの子にとっても。熊谷の父と母の死には立ち会えなかったわけだから。あの子にとって家族として、家族の死に立ち会う経験ができたっていうことは大事な経験だったと思うよ」
と言いました。

ドイツへ帰る前日、努と妻が話をしていました。
「家族っていいよねえ。どんなに離れていても、こうして帰ってくれば無条件で受け入れてくれる。もちろん、僕も受け入れる。そういう関係なんだよね。僕も今まで、そういう関係のものを作ってこなかったけど、やっぱり作りたいなって思うよ」
「ふーん。そんなふうに考えてたんだぁ…」

成田空港で、搭乗者のゲートをくぐった努に、蓮と沙羅が一生懸命手を振っていました。そして努も一生懸命手を振り返していました。

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、地域情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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