【子育てはお好き? -専業主夫の子育て談義-】第241回「ほんとにサンタクロース?」
ピンポーン。朝10時。
玄関のブザー(“ブー”じゃないからブザーじゃなく“呼び鈴”?)が鳴りました。
妻が受話器をあげて、「はい、はい」と答えています。
「印鑑どこだっけ?」
どうやら、宅急便らしいです。
玄関で荷物を受け取っている妻の声が聞こえました。
リビングに戻ってきた妻は、4、50センチくらいの蓋が少し盛り上がった段ボールを抱えています。
「蓮くん、沙羅ちゃん。サンタさんからプレゼントが届いたよぉ!」
「えっ?!」
私、麻耶、翔が、一斉に声をそろえて顔を見合わせました。私も、麻耶も、翔も、誰かから送られてきた小包を、妻が「サンタさんからのプレゼント」と言ったとばかり思って、
「誰?」と妻に聞くと、
「だから、サンタさんだよ」
こういう日に届くように、こういうやり方をするのは、「そうかぁ、努!」と思いながら、「いやいや、まてよ。努はドイツだから、宅急便っていうことはあり得ないし、それじゃあ、真? いや、弘子かな?」と考えながらも、まだ妻のジョークだと思っている私は、「誰?」ともう一度妻に尋ねました。
「だから、サンタさんだよ」
「はぁ?」
「ほら、差出人のところが“サンタクロース”ってなってるの! だから、配達のお兄さんも、“うっ!”と詰まって、“サンタクロースさんからお届け物です”って言ったんだよ」
私、麻耶、翔が、また一斉に、
「はぁ?!」
「ほんとだぁ! “サンタクロース”しか書いてなぁい! 住所が書いてないけど、住所なしで電話番号だけでも出せるんだぁ!」
と変なことに感心しながら、
「でも、誰だろうこの番号? マコちゃん(真のこと)でもないし、弘子ちゃんでもないし…。一番やりそうなのはオーちゃん(努のこと)だけど、宅急便はあり得ないしね」
そう言いながら、麻耶は電話番号を元に、携帯で送り主を調べています。
「サンタさんからだって! ほら、開けてごらん」
妻が蓮と沙羅に声をかけました。
「送り主が誰だかもわからないうちに開けちゃっていいのかなあ?」と思う私を横目に、荷物がどんどん開かれていきます。
「ワーイワーイ! これ沙羅ちゃんほしかったの!」
「あーっ、雪だるまだぁ!」
蓮も、沙羅も、大騒ぎです。送り主を調べていた麻耶も、
「この犬の人形、ほんとに沙羅がほしがってたんだよ」
どうやら、沙羅に取っては何よりのサンタさんからのプレゼントだったようです。
「あっ、わかった! おばちゃんだ!」
送り主は、妻の妹でした。9月に義母が亡くなったあと、ちょっと喧嘩になって、今まで音信不通状態だったのですが、何とか関係を修復したいということでしょうか。
「やっぱり何とかしたいんじゃないの?」
「そうだよね。そろそろ何とかしないと…」
「だいぶ考えたね、こりゃあ」
夜になりました。いよいよ、例年通り「本物のサンタ」(第141回参照)がやってきます。ローストビーフやらローストチキンやらを食べていると、蓮が今にも吐きそうに、「オエッ!」となりながら、目を白黒させています。
「ほらっ、この鳥の丸焼きがダメみたい。ちょっと赤いところがあるでしょ。この血がついてるところがダメなんだよ」
「ほんとに神経質だね、蓮は。そう言えば、この前も何だったかで同じようになってた」
しばらくすると今度は沙羅が、
「もう寝よっ! ねえ、寝ようよぅ! サラちゃん、サンタさん怖いぃ」
と言い出しました。
「ほら、やっぱりやり過ぎなんだよ。蓮もローストチキンのせいじゃなくて、怖くて緊張しちゃってるんじゃないの?」
「??? そうかも…」
布団に入ると程なくして、翔サンタが鈴を鳴らしながらやってきました。
「サラちゃん、サンタさんと握手するぅ!」
さっきまで怖がっていた沙羅はどこに行ってしまったんでしょう。
一応「眠ってないとサンタさんは来ないよ」ということになっていたにもかかわらず、蓮と沙羅の緊張をほぐそうとしてか、妻は翔サンタに、
「メリークリスマス! サンタさん」とか何とか、大きな声で声をかけています。
「おいおい、眠ってないとサンタさんは来ないことになってたんじゃないのかよ!」
あごにつけたひげが取れそうになっている翔は、必死でひげが取れないようにしゃべっているので、思うように口を開くことが出来ず、
「モローコロソモーソ」
とわけのわからないことを言いながら、プレゼントを蓮と沙羅に渡すと、二人と握手を交わし、再び鈴を鳴らしながら、帰って行きました。
まったく、毎年毎年、どいつもこいつもやり過ぎなんだよぉ!
先日、TBSテレビのグローバルナビで「新日本様式」協議会のことが取り上げられていました。その中で、日本のものつくりの衰退についていろいろと話が出ていましたが、今後の日本に必要なのは、効率の追求ではなく、遊び(心のゆとり)や創造なんだという話をしきりにしていました。
21世紀は文化の時代。無駄と思うようなものが、価値に転化する。そう考えると、やり過ぎのサンタクロースも21世紀的なのかもしれないなあと勝手に解釈するのでした。
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、地域情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。
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