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2021年12月14日 (火)

【子育てはお好き? -専業主夫の子育て談義-】第220回「うちわ祭(まつり)」

一昨年の夏(第117回)ちょっと触れた熊谷の「うちわ祭」。昨年は、義父の具合が悪くて行けなかったんだけれど、今年は孫を連れて行ってきました。
どういうわけか、娘の麻耶(まや)が、どうしても4歳の蓮(れん)と3歳の沙羅(さら)を“叩き合い”(http://www.city.kumagaya.saitama.jp/kanko/kumagayautiwamaturi/index.html を参照)の中に入れるんだと張り切っていたので、
「しょうがないなあ、じゃあ肩車でもしてやるか」
というわけで、先に叩き合いが行われる“お祭り広場”(“広場”と言うけれど、ここは普通に言う“広場”ではなく、大きな十字路なんですが、毎年そこで各地区から12台の山車が集まり、交差点の中央に向かって、祭り最後のお囃子の叩き合いをする場所になっていることから、“お祭り広場”と呼ばれています)に行っていた麻耶(蓮、沙羅つき)と連絡をとり、お祭り広場のそばで合流しました。
お囃子の叩き合いは、祭りが行われる3日間を通して場所を変え、毎日行われるのですが、最後に行われる叩き合い以外は、基本的に12台の山車を扇形に並べて行います。うちわ祭最後の叩き合いだけは、中央に舞台が設営された十字路、お祭り広場を、四方向から山車が囲んで、360度を山車が囲んだ状態での叩き合いですから、その中にはいると、とにかく圧巻です。
問題は、山車に囲まれた中にいる人の数。“山車に囲まれたい”と、早くから人が集まっているところに、さらに四方向の道から広場に向かって山車が迫ってくるわけですから、交差点内ではなく、四方向のそれぞれの道にいた人たちまでもが、山車に押されるように交差点の中に“ギューッ”と圧縮、詰め込まれてくるわけです。初めから中にいた人間は、押されて倒されないように、かなり踏ん張らないと危険です。
広場からかなり遠くで、待機していた山車が、こちらに向かって動き出したのが見えました。天気がはっきりしなかったせいか、例年よりは人手が内輪な気がしたので、蓮と沙羅を連れていても、それほど危険はないと判断して、頭の中で押し込まれたときのシミュレーションを展開して、一応広場の中心で、山車が来るのを待つことにしました。
「もうじき山車が来るぞ! 準備はいいかっ!? 蓮、気合い入れろっ! しっかりつかまってろよっ!」
もちろん、半分くらいは演技で、肩の上に乗っている蓮に声をかけると、
「おーっ、おーっ、おーっ!」
と蓮も、両手をやや下に広げて、気合いを入れて見せました。もちろん、それも蓮の演技なんですが、その仕草がいかにも本当に気合いを入れているようで、とてもおかしいので、思わず、
「ぷっ!」
と吹き出してしまいました。なかなか、蓮も演技派のようです。
山車が広場の直前まで来たとき、どういうわけかそのすごい人混みの中に、救急車がサイレンを鳴らして入ってきました。
「救急車が通過します。道をあけてください」
警備の人たちは、必死で道をあけようとしますが、とにかく危険なくらいの人混みですから、そう簡単にはいきません。けれども、そこに集まっている人たちもなんとか救急車の通る道をあけようと、精一杯後ろに下がり、なんとか無事救急車は通過することができました。自分だって危険にさらされているにもかかわらず、一生懸命道をあけて救急車を通そうとする人々の優しさ。協力して道をあけた、近くにいた人たちとは、言葉こそ交わしませんが、妙な連帯感が生まれたのがわかりました。
いよいよ山車が迫ってきます。人の波は、すごい力で外から内へ、外から内へと押してきます。その波の力を、まるで水をかくように両手で脇へ逃がし、なんとかやり過ごします。「もうちょっと。もう山車が止まるよ。ほーら、止まったあっ!」
思った通り例年よりずいぶん人出が少ないようでした。それほど危険を感じることもなく、12台の山車が止まり、叩き合いが始まりました。
交差点の中心で待つこと1時間。すごい音、すごい熱気。汗が容赦なく首筋を伝わります。そのとき、肩車をしている蓮が急に動いたように感じました。
「れーん!」
「寝ちゃってるぅ! こんなにすごい音の中でも寝られるんだぁ!」
明るいうちから、麻耶に連れ回され、大興奮の蓮と沙羅。普段歩いたこともないような距離を歩かされ、しかも今はいつもならもう眠りについている午後9時です。手には、露店で買ったおもちゃをしっかりと握りしめ、コックリコックリし始めてしまいました。
「おりたいよぉ! だっこぉ!」
仕方なく、肩からおろして、だっこしてやりました。
さすがに、蓮もぐっすり眠るわけにはいかないらしく、なんとか最後まで持ちこたえました。お祭り広場で待ち始めてから、2時間あまり。蓮君も沙羅ちゃんもご苦労様でした。さすがに大興奮ではあるようで、実家までの2キロ近くの道のりを、一言もぐずらずに、蓮も沙羅も歩き通しました。
熊谷中が大興奮のうちわ祭。とっても楽しい時間を過ごしましたが、ただ一つしらけたことがありました。それは、何人ものあいさつがあった後、ほとんど最後に近くなってからあった県知事のあいさつ。毎年県知事がみえていて、来賓代表であいさつをするのですが、なんと上田知事は「うちわ祭(まつり)」を「うちわ祭(さい)」と発音したあげく、熱気というかその情熱というかそういうものを表現しようとしたんだと思うんですけれど、「涼しいぞ、熊谷! 熱いぞ、熊谷!」と叫んじゃったんですよね。知事のいた席は、来賓用にしつらえたかなり高い舞台の上。人混みの中の暑さなどまったく、感じ取っていなかったようで、「うちわ祭(さい)」と気候の涼しさを言った「涼しいぞ、熊谷!」で、お祭り広場は、一瞬シーンとなりました。あいさつが終わった後も拍手はまばら。行政を司る人は、もっと県民の気持ちに寄り添えないとね。
お祭り広場での叩き合いが終わり、各地区へ帰っていく山車とすれ違うたび、蓮も沙羅も大きな声で「バイバーイ」とちぎれんばかりに山車の上で鉦や太鼓を叩いているお兄さん、お姉さんに手を振っていました。
もう来年は、蓮君を肩車するのは、勘弁勘弁!

 

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、地域情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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