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2021年12月 6日 (月)

【子育てはお好き? -専業主夫の子育て談義-】第209回「そして鯉のぼりはなくなった」

ほぼ毎日夕飯の買い物をする近所のスーパーマーケットに、大・中・小、3種類の鯉のぼりが並んでいました。
「これ、蓮(れん)に買ってってやろうよ」
「まだいんじゃないの。あんまり早く買っていっても、気持ちも保たないし、壊しちゃってもしょうがないし…」
「でも、なくならないかなあ?」
「だいじょぶでしょ。まだあんなにあるから」
「私、あの中くらいの鯉のぼりがいいと思うんだけど、どう?」
「そうだね。一昨年麻耶(まや)が買って、ベランダに付けといたやつは、風で破れちゃったからね。外に出さないで家の中に飾るんなら、あの真ん中のやつだろうね。来年も使おうっていうわけじゃないよね? 今年限りっていうことなら、あれでいんじゃないの」
「まっ、1,000円だしね」
「ん? じゃあ、あの大きい方だったら来年までとっとくわけ?」
「まっ、1,500円だからね。もったいないでしょ? もし破れちゃったりしたら、来年また買ってもいいけどね」
「当たり前でしょ! 1,500円だからって、あんなの来年までとっとく気!?」
「まあ今年1年でもいいかなぁ。とうとう鯉のぼりも使い捨て時代到来かぁ…。寂しいもんだね」
「ん~、確かに。昔は、男の子のいる家は、どこの家も庭に鯉のぼり用の棒が立っててさぁ。あれって、抜いたり立てたりした覚えないから、1年中立ってんだよね」
「あ~、そうだねえ。女の子しかいない家は、肩身が狭かったんだろうね。あんまりそんなこと考えたことなかったけど。うちなんて、女二人だから普通だったら肩身が狭い思いしてたんだろうけど、母なんてそういう行事に疎い人だったからね。父は男の子がほしかったみたいで、だから私を男みたいに育てようとしたんだよ」
「今は、棒を立てとく庭がなくなったおかげで、“うちには男の子がいます!”みたいじゃなくなって、そういう意味では昔よりよくなったとも言えるのかな?」
「ん~? いいのか悪いのか…。確かに差別はなくなったって言えるかもしれないけど、自分の家に子どもがいることを外に公表しない分、昔みたいに子どもが大事にされてないような気もする。一人っ子を大事にするっていうのとは違った意味で、すべての子どもが地域の中で大事にされてたよね、誰のうちの子どもっていうことではなく」
「そうだね。それは、その通りだと思う。鯉のぼりにしても、ひな人形にしても、それ自体その子のものっていうよりは、むしろそういうものを飾ることで、社会に対して“こういう宝がうちにはいますよ”ってアピールしてるわけでしょ。それを社会も受け入れてた。飾っている方は飾っている方で、“一人前の大人に育てますよ”って、社会に対して宣言してるわけだよね。そういう意識が、“自分の子”っていう意識から“次世代を担う社会の子”っていう意識を養うんだと思うな。家の中にちっちゃな鯉のぼり飾ったり、ガラスのケースに入ったひな人形じゃあ、そういう意識は生まれないよね。隣の家に子どもがいるかいないかすら知らない、なんてことになりかねない」
「ん~、まったく」
その日は結局、鯉のぼりを買わずに帰りました。2日後、そのスーパーマーケットを訪れると、
「あ~っ、やっぱりな~い!! だから言ったじゃない! もう大きいのしか残ってない!」
「まあ、いいじゃん。その大きいの買っていけばぁ」
「1,000円だから買おうとしたのに!」
「1,500円だと買わないわけ?」
「そういうわけにいかないでしょ! いいよ、それでぇ!」
鯉のぼりをもらった蓮くんは大喜び。
果たしてこの鯉のぼりは、来年までとっておくことになるのでしょうか。

 

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、地域情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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