【子育てはお好き? -専業主夫の子育て談義-】第231回「命の重さ」
また悲惨な事件が起きてしまいました。
さっきテレビのニュースを見ていたら、流れてきてのは横須賀の小学5年生が自殺したというニュースでした。まだ、はっきり自殺と断定されたわけではないようでしたが、警察は「自殺した可能性があるとみて調べている」とか。地上約1.8メートルの電柱を支えるワイヤのプラスチックカバーの上から自転車のチェーン錠をかけ、首をつっていたらしい。発見される直前に、自宅のある団地施設内で焼き芋を焼こうとたき火をしているところを帰宅した母親に叱られ、自転車で家を出たということのようなので、母親に叱られたことが原因ではないかと見られているとのことでした。
日常的な母親と子どもの関係がどんなふうにあるにせよ、たったそれだけのきっかけで命を絶つ必要があるのだろうか…。とても信じられない気持ちでニュースを見ました。
先日の北海道滝川市の小学6年女児の自殺の問題は、当初「いじめの事実は確認できない」としていた滝川市教育委員会に、遺書の内容が報道されて以来抗議が殺到し、とうとう教育長が辞任するという事態にまでなりました。
10月2日、毎日新聞北海道版の記事によると、遺書は次のようなものでした。
■女児の遺書の内容 ※一部抜粋、かな遣いなどは原文のまま
◇学校のみんなへ
この手紙を読んでいるということは私が死んだと言うことでしょう
私は、この学校や生とのことがとてもいやになりました。それは、3年生のころからです。なぜか私の周りにだけ人がいないんです。5年生になって人から「キモイ」と言われてとてもつらくなりました。
6年生になって私がチクリだったのか差べつされるようになりました。それがだんだんエスカレートしました。一時はおさまったのですが、周りの人が私をさけているような冷たいような気がしました。何度か自殺も考えました。
でもこわくてできませんでした。
でも今私はけっしんしました。(中略)
私は、ほとんどの人が信じられなくなりました。でも私の友だちでいてくれた人には感謝します、「ありがとう。」それから「ごめんね。」 私は友だちと思える人はあまりいませんでしたが今まで仲よくしてくれて「ありがとう。」「さよなら」。(後略)
◇6年生のみんなへ
6年生のことを考えていると「大嫌い」とか「最てい」と言う言葉がうかびます。(中略)
みんなは私のことがきらいでしたか? きもちわるかったですか? 私は、みんなに冷たくされているような気がしました。それは、とても悲しくて苦しくて、たえられませんでした。なので私は自殺を考えました。(後略)
報道によると「私が死んだら読んでください」とのメモ書きとともに計7通の遺書が教壇の上に置いてあるのが見つかったそうですが、すべてを鵜呑みにするということではないにしても、なぜここまで追い詰められた少女の気持ちを真っ直ぐに受け止めようとしなかったのか…。
横須賀の5年生の問題のあとには、11日に自殺した福岡の中学2年生の男子の問題が、子ども同士のいじめだけではなく、教師からのいじめを受けていたというニュースが流れてきました。本日(16日)の朝刊に大きく報道されているようなので教師の言動については触れませんが、教師の言動としてというより、人としてまったく信じられない言動が繰り返されていたことに、あきれるばかりです。
人が人として生きていく上での倫理観は、いったいどこに行ってしまったのか…。
先日、向井亜紀・高田延彦夫妻の代理出産による双子の出生届の受理について、品川区長に対し出生届の受理を命じる決定が、東京高裁から出されました。
昨日(15日)は、娘夫婦の受精卵を50代後半の実母の子宮に戻し出産した事例があると、長野県の産婦人科医師から発表がありました。
私には実子がいるので、子どもができない人たちの苦しみが充分にわかるとは言えませんが、正直言ってここのところの報道や世の中の動きには、かなりエゴイスティックなものを感じ、違和感があります。向井・高田夫妻の双子の出生届が受理されないという状況も、実際に子どもは生まれてしまっているわけですから、高裁の判断というのは妥当かなとは思います。けれども代理出産自体、あまりにも子どもを親の立場からだけ見てはいないか。科学の進歩とともに、いろいろな形での出産が可能になりました。私が子どものころ、妹が「小麦粉をこねこねして赤ちゃんを作る」と言ったことがありましたが、最近の命の誕生は、まるでこういった表現が当てはまるようにすら感じます。代理出産の是非を頭ごなしに非とするつもりはありませんが、もっと子どもの人権という立場での議論が必要なのではないか…。
そういう議論をどこかに置き去りにして、世の中が進んでいる現状が、倫理観の欠如を助長し、子どもの自殺にもつながっているように感じてなりません。子どもは親のものではなく、社会全体のものなんだという意識を社会が共有したとき、初めて子どもたちが大切にされる世の中が来るように思うのですが…。
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、地域情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。
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