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2021年11月21日 (日)

【子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー】第184回「やっと出会ったちょっとまともな話」

このところ教育問題への学校の取り組みや行政の施策などが次々と打ち出され、しばしば新聞報道されます。けれども、その中にどうもしっくりくるものがない。それはなぜかと考えてみると、以前からこの連載の中でも何度となく言ってきていることですけれど、教育の荒廃に対する対策として行われることが、ただでさえ負担のかかっている子どもたちにさらに負担を強いることばかりで、学校なり行政なりが自分たちを変えようとする施策になっていないということなのだろうと思います。
例えば最近取り上げられ始めたCAP(キャップ)。これは、犯罪やいじめから子どもを守るためのプログラムを教える団体ですけれど、子どもたちにロールプレイを用いて自己の身の守り方を教えています。あるいはさいたま市が小中学校で進める「人との関わり方」の授業。どちらも、教育の問題点を子ども自身の中に見いだそうとするもので、ロールプレイあるいは授業を受けて変わらなければならないのは、子どもたち自身です。学力が低下したとして大騒ぎされたときにしても、授業時数の増加や家庭学習の増加によって負担を強いられるのは、同じく子どもたち。私は、今の子どもたちが昔と比較して、単純に「荒れている」とは思わないけれど、百歩譲って「荒れている」と考えたとしても、それに対する対策が、子ども自身に向けられたものであっていいはずがないと思います。それは「荒れてる」という原因が、成長していく無垢な子どもたちにあると考えるより、大人たちの子どもたちに対する対応に原因があると考えた方が自然だからです。
11月6日の朝日新聞朝刊に「学力向上七つのカギ」という見出しで、公立小中学校の底上げ策を研究者のグループが調査したという記事が掲載されました。大変長い引用になって申し訳ないのですが、大変わかりやすくよくまとまっている記事なので、一部をそのまま引用させてもらいます。すでにお読みになった方には、申し訳ありません。
「一人ひとり異なる環境にいる子どもたちの学力格差をどう乗り越えるか。公立学校が抱える根本的な課題に取り組むため、8人の研究者が11の公立小中学校に1年近く通った。そこで見えた学力向上策のカギは七つ。”子どもを荒れさせない””チーム力を大切にする学校運営”など、学校づくりの原点が並んだ。計算ドリルだけでは学力の底上げはできない。研究者はそう分析している。」「研究者らは各学校に10カ月通い、授業の様子を詳しく観察、数十時間、教職員をインタビューし、”効果のある学校”の共通点を七つにまとめた。」
①子どもを荒れさせない
②子どもを力づける集団づくり
③チーム力を大切にする学校運営
④実践志向の積極的な学校文化
⑤外部と連携する学校づくり
⑥基礎学力定着のためのシステム
⑦リーダーとリーダーシップの存在
「子どもを荒れさせないは、授業が成立する大前提だ。”効果のある学校”は課題のある子に家庭訪問を重ねたり、休憩時間に子どもと過ごしたりしていた。子どもを力づける集団づくりもあった。”一人ひとりをないがしろにしない”態度を教職員が共有する。グループや班の活動をできるだけ取り入れ、”総合的な学習の時間”の事前学習や校外活動で”自分は必要な人間だ”と実感させようとする学校が目立つ。チーム力を大切にする学校運営も重要だった。成果を上げている学校は教職員の間に信頼関係がある。一人ひとりの力を引き出そうとし、課題を抱える教員をカバーしつつ、責任をおろそかにしない運営をしていた。実践志向の積極的な学校文化は、教職員の”まずやってみよう”という雰囲気を意味している。”効果のある学校”は、”動くときは一斉に、ぱっと”という姿勢があった。他校は、アイデアが出ても、”やってもむだ””負担が増えるだけ”となりがちだった。家庭などの外部と連携する学校づくりでは、家庭学習を促すのに家庭生活アンケートをしたり、家での学習の手引きをつくったりしていた。基礎学力定着のためのシステム。成果を上げた学校は、学力保障部などの校内組織を置き、”学習意欲の向上””家庭学習の習慣づくり”といった理念を掲げて少人数分割、習熟度別授業や補充学習など多様な指導を導入していた。リーダーとリーダーシップの存在も欠かせない。管理職の方針を徹底するというより教務、生徒指導、学年主任が中堅として動き、責任の所在をはっきりさせながら同じ方向に進む”教師集団づくり”を目指していた。」(「」内が朝日新聞よりの引用。「」の中の” ”は原文では「」)
割愛できないので、長くなりましたけれど、この調査の中に、一つの方向性が見えているように思います。この調査は「学力向上」がテーマですが、私は「学力向上」というより「学校運営全般」に渡って言えることだと思います。細かい中身の議論は省きますが、大切なのは、大きな方向性で、「七つのカギ」の中でも指摘しているような、責任の所在をはっきりさせ、責任をおろそかにしないということだろうと思います。学校や行政の至らなさを子どもや親に押しつけるのではなく、しっかりとした施策を実行して欲しいと願います。もちろん親も自分の責任をおろそかにしないことは言うまでもありません。子どもには、何の責任もないのですから。

 

 

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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