【子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー】第176回「夏休み明けの問題 その2」
1学期の間はなんとか学校に行っていた子どもたちも、長い夏休みを過ぎるとどうしても学校に行けない子どもが増えます。
今までは”学校に何か行きづらいことがあるのだろう”といじめを疑ったり、学校の厳しい管理を疑ったり、おそらくそんなことで解決してきたんだと思うのですが、最近はどうも傾向が違うようです。
夏休みも終わりに近づいたころ、
「宿題終わった?」とA子に尋ねると、
「うううん、終わってない」
とりあえず宿題の状況を確かめると、まったく手をつけていません。ちょっとやるように促しても、「うん」と返事はするものの、一向にやる気配もない。学力もどちらかと言えば低い方なので、素直に考えれば、「なんとか宿題をやらせないと学校に行きにくくなる」と考えるところですが、どうも違う。
よく話を聞いていくと、”宿題が終わっていないから学校へ行きたくないのではなく、学校へ行きたくないから宿題をやっていないのだ”ということに気づきます。
B子は、過去に学校でいじめにあったから、学校へは行きたくないと主張します。B子の主張を聞く限りでは、確かに許されないようないじめがあり、学校に行きたくないのも当然と思えるのですが、数ヶ月にわたりB子と話をしていると、B子の主張に周りがついて行けないことに気づきます。自分の主張が通らないとまったく人を受け入れないのです。自分勝手というより、もう”だだをこねる”というのに近い。
さて、A子もB子も1学期はなんとか学校へ行っていました。夏休みを迎えた途端、これまで限られていた親子の接触の時間は、格段に増えます。学校という他人との関わりの中では、A子もB子も自分の主張がすべて受け入れられるわけではないことをよく知っているので、A子もB子もあまり目立たぬよう、たいしたわがままも言わずにおとなしく過ごしています。二人とも、部活動や外での活動といったものがないので、夏休みに入ると、人間関係はほとんど親子の関係に限られてしまいます。
A子は、親に対し”学校へ行きたくない”と主張すれば、必ず最後は自分の主張が受け入れられることを、小さいころからの親との関係の中で学んでいるので、いろいろな手を使って”学校へ行きたくない”とアピールするのです。宿題をやらないのもその一つなのです。夏休み前半は、A子にとって平穏な日々でしたが、2学期が近づくにつれ、アピールがひどくなり、両親がわかってくれないとリストカットをする、食べ過ぎたと言ってオーバードラッグする…。これは、学校に通学しているときには親との関係が時間的に制約されているので、あまりひどく起こらないのです。こういう状況になったときに、両親が毅然とした態度で、子どもの言動を拒否できれば、時間はかかってもどの時点かで必ず状況を打破できるのですが、子どものそんな様子に親がストレスを感じ、怒っては甘やかし、怒っては甘やかしを繰り返し、親に限界が来たときには、子どもの主張をすべて認めてしまい、結局子どもの主張通り、宿題はやらない、学校へは行かない、お前は病気だから何もしなくていいよ、ということになっていってしまうのです。A子の場合、まったくそういう負の連鎖になってしまいました。
B子は違いました。休みに入ってからも母親が必死で、子どもと距離を置く(放って置くという意味ではなく、よけいな口出しをしないこと)努力をしたからです。とにかく口出しをしないように、じっと我慢をしていたようです。その結果、B子のエネルギーは、母親に向かわず、外に向かうことになり、親子の感情のぶつかり合いによるストレスはなんとか避けられたようです。もっとも母親は我慢をしていたのでそれなりのストレスを溜めてしまっていたようですが。B子は2学期のはじめから無事に学校に行っています。
夏休みの過ごし方は、親子の関係が近づくだけに、関わり方を間違えると、その後様々な問題を生じます。最近の傾向として、親子関係が著しく近くなる傾向にあるので、夏休みのようにさらに親子関係が近づくような場合には、あえて距離を置く努力が必要なのだろうと思います。これは夏休みに限ったことではないけれど、特に夏休みのような長期の休みに求められる重要なポイントだろうと思います。そこでの失敗は、後々まで尾を引く可能性があるので、ぜひ注意してください。
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。
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