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2020年2月14日 (金)

第173回「プールの安全」

「そこの小学生! 走るなあ!」
「飛び込み禁止! プールサイドから飛び込まないで!」
「ほらほら、そこの僕。悪ふざけはしないで!」
「時間ですからあがってください。係員の笛の合図があるまでプールに入らないでくさい」
公営のプールに行くと、ひっきりなしにハンドマイクでの怒鳴り声や注意や指示の声が流れます。とにかく聞き苦しいこと、甚だしい。1時間くらいすると、あまりに流し続けられるその騒音に慣れてしまって、気にならなくなるのですが、そこでまた大声で怒鳴られたりすると、「はっ」とその騒音にまた気づかされて、ほんとにイライラしてきます。
「こんなに怒鳴らないとダメなのかねえ?! 確かに言うこときかないで危険なことする子もいるんだろうけど、今日は見たところそれっぽい子はいないけどね。怒鳴っても、穏やかに注意をしても、そんなに違うとは思えないし、まず楽しくないと、かえって心が荒れて、乱暴になるもんだけどね」
いつ行っても、どんな状態でも、とにかく怒鳴る、怒鳴る。特にひどかったのは、今はなくなってしまった、蕨の北町にあった蕨市民プール。その怒声といったら半端じゃない。あんなに怒鳴って、声がかれないのかなあと思うくらい。プールの監視員ていうのは、ほとんどが高校生のアルバイトで、直接話をしてみると、そんなに怒鳴るような子には思えないんだけれど、人間っていうのはいったん権力を握ると、とにかくそれを誇示しようとする。
それに比べて沼影の市民プールは、ややおとなしめでした。怒鳴るというよりは、むしろ「××してください」「××はしないでください」いう指示が多い。以前からそうだったのですが、つい先日妻が孫を連れて訪れると、さらにソフトになっていたとか。以前ならあきらかに怒鳴るようなケースでも、怒鳴ることはせずに、そばまで行って注意をしている。だいぶ静かになったようなので、それはそれでよかったなあと思って妻の話を聞いていたら、やっぱり妻は腹を立ててる。
「いやあ、ひどい注意の仕方してるんだよね。怒鳴らないようにかなり指導はされてるみたいで、大声出したりはしないんだけど、小学1年生くらいの子が幼児プールに入ってきたら、その子のところまで行って、すごくしつこく注意してるの。私が蓮(れん)と沙羅(さら)をそこで遊ばせてて、気にならないくらいだったし、おとなしい子で、すぐに出て行こうとしてたしね。あんまり注意されるもんだから、なんだかすごく小さくなっちゃってて。あそこまでやらなくたっていいんじゃないのっていう感じだった。注意してたあの高校生は、いつもあんな風に学校で怒られてるんだろうなって思ったよ」
これで妻の話は終わりませんでした。
「それでねえ、蓮があのほら、ポリでできてるよく幼稚園にあるような、ちっちゃな滑り台あるでしょ。あれで滑ってて、そのうち滑るところじゃないちょっと脇のところで滑ったら、少し角度がきついから、“ぼしゃん”て頭まで水に浸かっちゃったんだよ。蓮もビックリしたみたいだったけど、すぐに笑い出して、私と沙羅と3人で笑ってたら、その監視員が来てさ、“危険ですからそこで滑らないでください”って注意するんだよ。何回か滑ってるの見てたんだよ。“ぼしゃん”って落ちたの見たから来たんだろうけど、“私がここで見てるんだし、そんなに危険なことしてないでしょ?”って言ったら、“前に事故があったので”って言うんだよ。“ほんとに事故があったんなら、そんなもんここに置くな!”ってだんだん腹が立ってきてさ、“責任者呼べ!”ってなったの」
「それで責任者と会ったの?」
「そうそう。女の人だったけど、事情を話して、もう少し注意の仕方を考えろって言ってきた。その人は事故があったなんて言ってなかったよ。事故があったって言えばいいと思ってるんだよ」
「そういうやり方はまずいよね。危険なことは危険って注意していいと思うけど、権威を示すために威張ったり、事故を持ち出したりするのはね。ほんとに事故があって危険なものなら、そんなところにあっちゃまずいし。蓮は見てたからいいけど、ちょっと親が目を離した隙に事故でも起こったら大変。“事故があったから危険”っていうのはちょっと変だよね」
公営のプールに行くたびに思うのですが、事故防止は重要だけれど、本当に防止をしようとするのなら、怒鳴って注意ばかりするのではなくて、もっときちっとした目を光らせて、安全を確保してもらいたいものですね。もうだいぶ前になりますが、陶芸で有名な笠間に行ったとき、市民プールに入ったことがありました。ここのプールは、平日にもかかわらず、お父さんと子どもという組み合わせがたくさんいたのにビックリしました。どうやらほとんどのお父さんが陶芸に関わっている方のようで、やはり土地柄なんでしょうか。そしてもう一つ驚いたことがありました。監視員の声を一度も聞かなかったんです。もちろんプールサイドには数人の監視員がいるのですが、声を出すことがありませんでした。そのうち、休憩時間になると、監視員がすべて建物の中に入ってしまい、プールサイドは誰も監視員がいない状態に。いやあ、これで大丈夫なのかなあと思いましたが、もちろん事故も事件も起きませんでした。混み具合も違うので、さいたま市でそんなことができるはずはないけれど、人を信用するという根底の姿勢は、見習って欲しいですね。
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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