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2020年2月 9日 (日)

第171回「明徳義塾高校野球部の連帯責任」

名門、明徳義塾高校野球部の一部部員による喫煙行為、下級生に対する暴力行為が明るみに出て、全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)開幕直前に、出場を辞退するということになりました。
こういった問題は、賛否両論あって、とても取り上げにくい問題なのですが、あえて取り上げることにしました。
出場辞退が報道されると、さずがにここ数年甲子園を湧かせ続けてきた学校だけに、大きな社会問題となり、「一生懸命努力してきた3年生に、連帯責任はかわいそう」という連帯責任反対派から、「部活動も教育なのだから連帯責任は当然」という連帯責任賛成派まで、テレビやラジオなど、さまざまなマスコミで取り上げられています。
私は、基本的に「連帯責任」という考え方は、間違っていると思います。「連帯責任」という考え方は、管理をするために存在するものであって、子どものため、生徒のために存在するものではないからです。小学校でよく行われている班別の行動は、連帯責任という名の下に、管理の道具として使われています。例えば、“班員の1人が忘れ物をしたために、全員が怒られた”、“班員の1人が掃除をさぼったために、全員がもう1度掃除をさせられた”…。おそらく、皆さんもそんな経験があるでしょうし、皆さんのお子さんも、今まさにそういう経験をしているのではないかと思います。
これは、とてもひどいことです。“自治を教える”ことを理由に、本来教員が一人一人の子どもたちにしなければならない指導の手を抜いているだけで、教育になっていません。教育の現場で行われている連帯責任というのは、責任を取らされる子どもたちに、まったく責任を取らされるいわれはないのです。
では、今回の明徳義塾高校野球部の問題はどうか。
この問題は、小学生の班の連帯責任とは少し違います。班の中で、忘れ物をしたり掃除をさぼったりした子は、その原因が班の中にはないのに比べ、明徳義塾野球部の問題は、その事件の原因が、野球部自身の中に存在すると考えられるからです。
私が以前講師をしていた専門学校の生徒の中に、甲子園の常連校から来た生徒が何人かいました。その生徒たちが口を揃えて言うのは、「普通の生徒が万引きをすれば、即停学か退学になるのに、野球部の生徒がやるともみ消されるんだよ」ということ。これは、別にこの生徒たちが通っていた高校だけの問題ではありません。明徳義塾高校も全く同じことをしようとしたわけだけれども、結果的にうまくいかなかった。そういった意味では、出場辞退というのは、連帯責任という言葉をもって片づけられようとしているけれど、問題を起こした生徒に起因する連帯責任としての対処ではない。
もう一つ見落としてはいけないのは、本当に問題を起こした生徒個人の問題なのかということ。1年生部員8人と2年生部員3人の計11人が喫煙していたと報道されていますが、一般的に言って上下関係が厳しい野球部やサッカー部のような部の部員で、3年生が喫煙していないのに、寮内で1、2年生が喫煙できるわけがない。暴力行為にしてもしかりです。これは私の想像の域を出ませんけれど、おそらくこの問題を放置すると、さらに別な問題が表面化した可能性があるのではないかと思います。そういうところに目を向けないで、連帯責任論だけで、この問題を片付けることはできません。
ある高校で、サッカー部員が万引きをしたことが発覚しました。以前は全国高校サッカー選手権にもたびたび出場していた高校ですが、この年は県予選で敗退してしまっていたので、出場辞退などと大げさなことにはなりませんでしたが、万引きで校内処分を受けたサッカー部員は部員全体の3分の1を超える30数名に上りました。こういうことはよくあることです。こういう問題は、万引きをやった生徒個人の問題ではなく、サッカー部全体の体質の問題だからです。
明徳義塾高校にも、そういった体質の問題はなかったのか。
今回の辞退という状況に一番納得しているのは、明徳義塾高校の野球部員かもしれません。私は、今回の辞退は当然のことと考えますが、今こそ問い直されなくてはならないのは、事件を起こした生徒たちではなく、大志を持った子どもたちの夢をかなえるべき指導者の質だと思います。教育の名の下に行われている部活動の指導者に一番求められているのは、単に勝負に勝つことではなく、人として成長していく子どもたちに何を伝えるのかということです。果たして明徳義塾の馬淵監督にそういったものがあったのかどうか…
出場を辞退した生徒たちの未来が、辞退したことで失われないことを願っています。
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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