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2020年2月14日 (金)

第172回「子どものころの記憶」

母に尋ねたことがありました。
「おじさん(母の兄)が亡くなったとき、横山のおばさん(父の従姉)が告別式に来てたよねえ?」
「来てたよ」
「おじさんを送るとき、おばさんに抱っこされて送ったような気がするんだけど、告別式におばさん来てたの?」
「そうだよ。お前は、あの時まだ3歳だっただろ、だからねえちゃん(父の従姉なんだけれど、父の兄弟のように育ったので、父と父の兄弟は“ねえちゃん”と呼んでいます)が、お前の面倒を見てくれてたんだよ」
「ふーん。なんか、あの時の記憶って、やけに鮮明なんだよね。たぶんおばさんの左手に抱かさって、ちょうど玄関の前のT字路のところで霊柩車を送ってたんだと思うんだよね」
「そうかもしれないねえ」
「横山のおばさんなんて、そんなに関係が近いわけじゃないから、おじさんの告別式に必ずいなきゃならない人じゃないでしょ。だから、おばさんに抱かれてたって思ってるっていうことは、これってやっぱり記憶なのかねえ? 3歳の時のことなんて、そんなにはっきり覚えてるもんかねえ? 誰かにそのときの様子をあとから聞かされて、それを自分のイメージとして持ってるのかなあ? 姫野(母の実家)の兄弟に抱かれてたって思うんなら、そこにいて当然の人だから、ちゃんと記憶があるわけじゃなくて、あとで自分で勝手に想像したっていうこともあり得るんだろうけど、横山のおばさんっていうのがねえ…。おばさんがそんなところにいるなんて、普通だったら考えないと思うんだけど、抱かれてたって思ってるっていうのは、ほんとに記憶があるのかもしれない。すごくはっきりとその情景が浮かんでくるんだよね」
「へえ」
「3歳の記憶なんてあるのかなあ? 4歳の時のことならはっきりと覚えてることがあるんだよ。お店(祖母が越谷街道沿いでやっていた駄菓子屋)の前をね、自衛隊の車が何台か列をなして通ったことがあったんだけど、その自衛隊の車に向かって敬礼してたのをよく覚えてるよ。親父がお酒を飲むたびに、“帝国海軍”の話を聞かされてたし、うちに飲みに来る人たちが、みんな涙を流しながら軍歌を歌ってたからねえ」
何歳くらいからのどういう記憶が鮮明に残るのか、よくわからないけれど、どうも私の頭の中には若干ではあるけれど3歳くらいの記憶があるみたいです。
「戦争の記憶なんてあるの?」
「うーん、全部覚えてるわけじゃないけどね。例えば飛鳥山の下にあった防空壕の中で、見ず知らずのおじさんにもらった白米のおにぎりのこととか、焼夷弾が落ちてくる時のヒューっていう音、そして爆発する時の地響きのようなドーンという音とか、戦隊を組んでとんでくるB29とか、そういう記憶はあるよね」
「45年の12月で4歳だから、東京大空襲の直前に岐阜に疎開した時は、まだ3歳になったばかりのころだよねえ?」
「そうだね」
「そうするとさあ、3歳になったばっかりのころの記憶っていうことでしょ。それって、その後大きくなってから人に聞いた話とか、いろいろな報道とか映画とかそういうものを見て、自分の意識の中で膨らませていったものじゃないの?」
「うーん、そういうこともあるんだろうけど、いくつかのことはかなり鮮明に覚えているから、自分の記憶だと思うよ。父と母はあまり感じないみたいだけど、私は未だに暗いところが嫌いだったり、花火の破裂するドーンっていう音が嫌いだったりするしね」
「ああ、そうだよねえ」
1941年生まれの妻には、戦争の記憶があるようです。子どものころの記憶というのは、単純に何歳何ヶ月くらいからあると考えるよりは、子どもにとってその出来事がどんな意味を持つのかで変わってくると考えた方がいいような気がします。そう考えると、幼少のころに楽しい体験をたくさんさせてあげることが重要で、大きなショックを受けるような経験はさせるべきではないということなのでしょうね。
“まだ小さいから”という考えはやめて、どんなに小さな子どもでも、一人の人間として尊重し、大切に育てたいものですね。
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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