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2020年1月 5日 (日)

第156回「人間の特徴」

前回の内容をさらに受けて。
「人間の持つ特徴は?」の問いにどんな答えを持つでしょうか?
おそらくいろいろな答えが出てくると思います。「道具を使う」「火を使う」「言葉を使う」「考える」「意志がある」などなど。どれもその通りだと思いますが、私が人間の特徴としてどうしてもあげたいと思うのは、「直立二足歩行」(二本足で立って歩く)と「他の動物よりも未熟で生まれる」ということの二つです。

人間の持つ特徴というのは、子育て・教育を語る上で非常に重要です。それは、人間がその特徴を持ち合わせているからこそ、他の動物とは違う人間らしい子育てが生まれ、さらにその子育てが“人間”を作っていくと考えられるからです。

さいたま市にお住まいの元教育学会会長で東京大学名誉教授の大田堯(おおたたかし)氏はその著書の中で、人間が「直立二足歩行」をする理由について、「手が使えるよう」とか「遠くが見渡せるよう」とかいう理由をあげずに、「その気になったから」と言っています。なんだか禅問答みたいな理由ですが、「その気になったから」という言葉は、「直立二足歩行」を人間の特徴として考えるとき、妙にしっくりきます。ラッコやアライグマだって手は使うけれど立って歩くわけではないし、“遠くが見渡せる”というなら、ダチョウやキリンのように首が長くてもいいわけで、どれをとってもなんとなく不満が残ります。そんな中で、おそらく「その気になったから」という理由を否定できる人はいないんじゃないでしょうか?道具や火や言葉を使うといった特徴にも、当てはまるわけで、「考える」「意志がある」という言葉とも共通する。そういった意味では、「その気になる」ということが、人間の特徴と言えなくもない(もちろん、生物学的な特徴というわけじゃなくて、教育学的に見た特徴ということだけれど)。

また「未熟で生まれる」とはどういうことかというと、他の哺乳動物は生まれたときからその種の形状をし、生まれた直後にはその種の親が持つ特徴をほぼ100%持っているんだけれども、それに比べて人間の赤ちゃんは、親の形状とは違って頭がきわめて大きく、人間の持つ特徴をすべては持っていないということです。このことは、人間は生まれて間もない赤ちゃんの時には非常に弱い存在であるけれど、人間として生きるための多くのことを身につけることによって、優れた適応力を身につけ、他の動物に比べてとてつもなく強い存在になれるのだということにもつながるわけです。

赤ん坊の時からオオカミに育てられた「カマラ」と「アマラ」が、人間社会に戻ってからも、人間には戻れず短い生涯を終えたという話(興味のある方はネット上で「カマラとアマラ」で検索してみてください)は、教育学を学ぶ者にとってあまりにも有名な話です。この「カマラ」と「アマラ」の出来事は、人間が人間として生きることの教育の重要性を物語っているものであり、人間が人間としての正しい教育を受けなければ人間にはなれないという、一つの証明でもあります。

親や社会が子どもにどういったものを与えるかによって、子どもはどんなふうにでも育ちます。そして親が子どもに何を与えたらいいかということは、子育ての大きなテーマでもあります。今までの連載の中でも、子どもに何をどう与えるかということを折に触れ述べてきたつもりですが、“子どもは誰のものか”という視点で見ていくと、自ずから一つの方向性が見えてくるように思います。

人間は「その気になったから立った」という大田氏の話は、まさに子育ての勘所でもあります。この人間の特徴をふまえて、子育て・教育を考えていくことが重要なのではないでしょうか。


**4月18日(月)掲載**

 

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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