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2020年1月25日 (土)

第164回「言ってはいけないその一言 -取引編-」

ちょっと本題に入る前に、奈良県警が“子どもに声をかけちゃいけない”なんていう馬鹿げた条例案の要旨を15日に発表したので、それに対して一言。
もちろんこれは「小1女児誘拐殺害事件」を受けてのものですが、禁止されるのは、「保護監督者が近くにいない13歳未満の子どもに対する(1)惑わしたり、うそをついたりする行為、(2)言いがかり、ひわいな発言、体をつかんだりつきまとったりする行為のほか、(3)13歳未満の子どものポルノ映像や画像の所持、保管」(16日 朝日新聞朝刊)だそうです。親の立場で「子どもを守る」ということに重きを置いて考えるとすれば、支持する人もいるかもしれませんが、こういうものは、その実効性と弊害をきちっと検証しないといけない。そこで、この条例案を見てみると、まず(1)も(2)も声をかけた内容について、誰がどのように判断するのか全くわからず、犯罪の構成要件がはっきりしない。しかもどれをとっても現行法で対応できる。となれば、条例そのものの持つ実効性というものは、全く疑わしいと言わざるを得ません。しかも弊害を考えると、大人と子どもの信頼関係を大きく損なわせ、地域社会の持つ教育力を崩壊させかねない。今までの私の経験から言うと、地域と子どもとの関わりは、防犯の観点からも、子どもの健全育成の観点からも大変重要です。もし、子どもに声をかけることが犯罪になるとすれば、そういった地域社会と子どもとの関わりは、ほとんど失われることになります。それがどんなに子どもを孤立させ、子育てを難しくしてしまうか…。むしろ、積極的に声をかけることを促し、地域社会における大人と子どもとの関わりを密にすることこそ、子どもを守ることにつながると思うのですが…。
教育は人を信頼することから始めるべきです。社会の現状がそれを許さないことも事実ですが、行政がやらなければならないことは、子どもたちの大人に対する不信感を煽ることではなく、“どうしたら子どもが大人を信頼できる社会を構築できるか”を真剣に考えることだと思います。こんな条例案が可決しないといいのですが…。

さて、「言ってはいけないその一言」に戻りましょう。
前回の「脅迫編」同様、親がよくやってしまうパターンに「取引」があります。
先日、スーパーで泣き叫んでいる4、5歳の男の子がいました。なぜ泣いているのかよくわかりません。泣き始めたときは、おそらくはっきりした理由があったのでしょうが、その様子からすると、どうやら本人もなぜ泣いていたのかよくわからなくなってしまっているようでした。
こういう時の親は、本当に困ってしまうもので、泣いている子どもには腹が立つのに、うっかり変な言葉をかけようものなら、火に油を注ぐようなことになってしまう。本来、毅然とした態度で臨むべきなんだろうけれど、周りの買い物客はっていうと「何いつまで泣かしてるのよ!」というような冷たい視線でこっちを睨みつけたり、「呆れた親」みたいな雰囲気で露骨に無視したり…。
結局この時のお母さんは、子どものそばまで行って怒鳴りました。
「いつまで泣いてるの! いい加減に黙りなさい!」
まあ、ここまではよかったんだけど、どうもこの後がいけない。
「泣くのやめたらチョコレート買ってあげるから黙りなさい」
あらあら、なんということ。泣いていることとチョコレートは、まったく関係がないのに…。
その言葉につられてか、子どもの泣き声はあっという間に小さくなり、10秒もしないうちに聞こえなくなりました。
しばらくすると、誇らしげにチョコレートの箱を手にしたその男の子とすれ違いました。どうやら、約束通りお母さんにチョコレートを買ってもらったようでした。
これはこの親子の、“人生における不幸の始まり”なのです。
このお母さんは子どもに、“泣き叫べば欲しいものが手に入る”ということを教えてしまったのであり、この男の子は“欲しいものがあるときは泣き叫べばいい”と学んでしまったのです。

どんな言葉が取引に当たるのか、そして取引がどんな結果を引き起こすのか、次回に続きます。

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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