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2019年11月 6日 (水)

【「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」第127回】「手の届く距離 -物理的距離編-」

「今日ねえ、蓮(れん)がね、マクドナルドでひどい目にあったんだよ!」
娘の麻耶(まや)が興奮気味に話します。
「ちょっと蓮より大きい子なんだけど、蓮のこといきなり叩いたと思ったら、その後蹴ったんだよ。たいした強さじゃなかったから蓮も泣かずに我慢したけど、ひどいでしょ?」
「いきなり?」
「そうだよ。蓮はなんにもしてないのに、いきなりだよ。それなのにそいつの母親なんてたいして謝りもしないんだよ」
「おまえ、守れなかったのか?」
「だって、いきなりだもん!」
「そんなことわかってるよ。だからおまえが守れなかったのかって言ってんの」
「予兆がなかったわけじゃないんだよね。蓮がポテト食べてたときに近づいてきて、勝手に蓮のポテト食べちゃったんだ。もちろん何本かだけどね。その子の母親なんて、ただ見てんだよ。さすがに食べっちゃったところで、一応謝りには来たけど、その子をたいして怒るわけでもなく、蓮に向かって“ボク、ごめんね”だって。そういう問題じゃないだろってゆーの」
「そりゃあ、おまえの言う通りで、その母親はおかしいと思うよ。だけどそれはそれ。なんでそんなことあったあとに、おまえは蓮が叩かれたり、蹴られたりするのを助けられなかったんだっていうの!」
「だっていきなりだったんだからしょうがないじゃん!」
「そりゃあ、全然いきなりじゃないだろ! 今回は相手が小さな子だったからよかったけど、もしもう少し大きな子で刃物でも持ってたらどうするんだよ」
「・・・」
「なんでも人を疑えって言ってるんじゃない。どんなことが起こっても必ず子どもを守れる距離にいなきゃダメだって言ってるんだよ。今回のように相手が子どものこともあれば大人のこともある。犬や猫のことだってあるし、事故や天災のことだってある。いきなりだから守れなかったなんて、言ってられないだろっ。守れなければ取り返しがつかなくなることだってある」
相手の母親のひどさを訴えたくて話を始めた麻耶でしたが、矛先が自分の不注意に向けられたので、気分を悪くしたらしく、ふくれっ面をして黙ってしまいました。

麻耶には前科がありました。
「お母さん、沙羅(さら)が三輪車から落ちて頭打っちゃった! しばらく泣かなかったんだけど、大丈夫かなあ?」
妻の携帯に電話がかかってきました。
「今はどこでどうしてるの!」
「今、パンダ公園で抱いてるんだけど、なんだかぐったりしてるような気がする」
「そういうときは、すぐ救急車呼ばなきゃダメじゃない! 今すぐウチに帰るから!」
妻もかなり慌てた様子で麻耶に指示を出しています。
妻の支持を近くで聞いていた私が、妻を通して麻耶に尋ねました。
「今は泣いてるの?」
「さっきまで泣いてたけど、今は泣きやんでる」
「三輪車から落ちたんだろ?」
「うん」
「どう落ちたの?」
「沙羅が一人で乗っていたら、蓮がハンドルを持っていきなり前に引っ張ったから、そのまま後ろに倒れちゃって後頭部から落ちたんだよ」
「パンダ公園なら下は土だろっ? 大きな石とかなかった?」
「土だよ。大きな石もない」
「今まで泣いてたんだろっ? だったら、バタバタすぐ動かないでもう少し様子を見てみな」
そう言って携帯を切りました。
しばらくするともう一度妻の携帯に麻耶から電話がありました。
「大丈夫みたい。遊び出した。今は笑ってる」
そんなことがあって2週間後、今度は沙羅が公園の滑り台の階段から落ちたと言って電話をかけてきました。ほんの数段だったようですが、ちょうど背中から落ちたらしくしばらく息が出来ずに、泣かなかったと言って慌てていました。その時も、ちょっと様子を見ているうちに元気になって、たいしたことにはならずにすみました。
そして、今回のマクドナルド事件。
麻耶も自分の不注意は充分わかっているので、そのことはあまり言われたくない様子。
とは言え、度重なる不注意に周りも一言言わずにはいられずに、麻耶を非難してしまいました。
小さい子どもがちょっとしたことでケガをすることはよくあるけれど、世話をしている大人が子どもとの距離をどう置くかがとっても大切ですよね。何があっても絶対に救える距離、それは見ている大人によっても違うけれど、自分はどのくらいの距離までだったら子どもにケガをさせずに救えるのか、いつもその距離を考えて子育てをしないとね。


**9月21日(火)掲載**

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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