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2019年11月 3日 (日)

第112回 「緊急のお願い」

 6月1日、長崎県佐世保市の市立大久保小学校で起きた事件は、日本中を震撼させました。私が最初にこの事件を知ったのは車のラジオでした。ラジオをつけた時ちょうどこのニュースが流れていましたが、次のニュースへ移る直前で、小学生にかかわる事件で何か大変な事件が起きたということしかわかりませんでした。あわてて、あちこちチャンネルを替え、ほぼ事件の概要を理解するのにそれほど時間はかかりませんでした。

 このニュースを聞いた時、大きな衝撃を受けましたが、あまり驚きはありませんでした。翌日の新聞だったかTVだったかの誰かのコメントにも、「いつどこで起きても不思議ではない事件」といったものがあり、事件そのものの悲惨さもさることながら、世の中がそういった方向に進んでいることを、とても悲しく思いました。 
 この事件の原因がどこにあるかは、簡単には言えません。チャットや「バトルロワイヤル」のことが連日大きく取り上げられていますが、単純にそういったものだけが原因のわけもなく、当然のことながら私たち大人の作っている現代社会全体のありようにも目を向けなくてはならないのでしょう。

 事件の翌日、素早い対応で保護者宛にプリントを配った小学校も多かったことと思います。そのこと自体は悪いことではないのですが、あるお母さんから見せられたプリントには、ちょっと違和感を感じました。
 校長名で保護者宛に配られたそのプリントは、「緊急のお願い」というタイトルになっていて、今回の事件を受けての”保護者に対するお願い”という形になっています。
 まず、私が違和感を感じたのは、”新聞・テレビ等の情報で御承知のように、また「あってはならないこと」が、長崎県佐世保市で起こってしまいました”という書き出しでした。何がどう違和感なのかということを説明するのは難しいのですが、私は「あってはならないこと」という言葉の響きに、非常に第三者的な無責任な感じと今回の事件を未熟な子どもと未熟な保護者の問題としてとらえ、子どもたちと保護者に”教師が正しい道を教え諭す”といったような感じを受けたからではないかと思います。
このプリントには「お願い事項」が7項目あります。
1.子どもの発するサインを積極的に受け止め、やさしさと厳しさを持って接してください。
2.刃物など「他人に危害を与えるもの」は、家庭の責任において子どもに持たせないでください。また、学校に持ち込まないようにしてください。



7.「常に一人ではない。困ったら親や先生に相談する」ことを、常に話し共感的態度で子ども達に接してください。
と、こんな感じです。
 一つ一つを見れば、特別間違ったことを言っているというわけではないのですが、こういう事件が起こったあとで、保護者が最も学校から聞きたいことは、子どもたちに対するお説教でもなく、もちろん保護者に対するお説教やお願いでもなく、公教育としての学校の責任ある対応、つまり”学校のこれまでの子どもたちに対する接し方と今回の事件を受けて今後どのような対応を子どもたちにしていくのか”ということです。保護者の立場からすると、「お願い」の1や7などまさに学校に突きつけたい言葉であって、今までどのように実践してきたのか知りたいところです。それを保護者に投げてどうするのでしょう。

 このプリントの中には、朝会をもち、「命の大切さ」を子ども達に訴えたこと、学級で話し合いをもち、指導の徹底を図ったことは書いてありました。が、教師が今回の事件をどうとらえ、学校としてどう対処していくのかはまったく述べられていません。
 学校や保護者がお互いに責任を押しつけ合うのではなく、学校は学校のできることを明らかにし、保護者は保護者のできることを明らかにすることで、現在社会の中で子どもたちにとっての最善の教育はなんなのかを模索していく必要があるのではないでしょうか。

**6月7日(月)掲載**

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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