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2019年11月 4日 (月)

116回「金縛り」

「(うっ! あっ!)」
「(あれっ? 息ができない!)」
「(たっ、たっ、たすけてーっ!)」
「(だめだっ!)」
 必死で息をしようとしますが、まったく空気が気管を通過しないのです。
「(たすけてーっ!)」
 心の中では叫んでいるのに声も出ません。
「た~っう~っえ~っえーっ!」
 やっとのことで息を絞り出しますが、とても声にはならず、ますます息がなくなっただけで、苦しさが増してしまいました。
「(あっ! うっ!)」
 と強く吸い込もうとしてもやっぱりだめです。
「(あれっ? 身体も全然動かない!)」
 右に寝返りを打とうとしても、左に打とうとしてもダメ。手もまったく動きません。目だけは開き、辺りを見回すことはできるのですが、どうしても身体は動きません。とても奇妙な感覚です。
「(金縛りだ!)」
 スーッと自分の顔から血の気が引いていくのがわかります。
「(どうすればいいんだろう? とにかく落ち着かなきゃ!)」
 すると突然、頭の周りで、何か小さな生き物が畳の上を走り回るような音がし始めました。
「(ねずみ?)」
 トコトコトコトコトコトコトコトコ、トコトコトコトコトコトコトコトコ…… どんどんその数が増えていきます。
「ピチプチュパプパピプチュピチプチュプチュ……」
 その生き物はテープレコーダーを早回ししたような声で、しゃべっています。
 その生き物は、ネズミのようなものではなく、どうも人間の子どものようにも感じます。見えているような見えていないような私の意識の中に、とんがり帽子をかぶった体長30センチくらいの人間の子どものような生き物が浮かび上がってきました。
 身体の硬直感は増し、私の恐怖心は最高潮に達しました。
「(だれ!? だれ!?)」
 必死で叫んでも、まったく声が出ません。
 そんなことが5分くらい続いたでしょうか…。
 その私の周りを走り回っていた人間の子どものような生き物は波が引くように一気に減り、一匹もいなくなりました。
 最初に感じた息苦しさはいつの間にかなくなって、それまでまるで石のように堅くなっていた身体からは、スーッと力が抜け気怠い感覚だけが残りました。
 これは、小学校6年生での体験です。中学生になってからも、同じようなことが何度か起こりました。2度、3度と体験するうち、私はそれを楽しむことができるようになりました。
 身体が硬直して、まったく動けない状況の中でも、
「今日はあの子どもたち来るかなあ? 何か話ができないかなあ?」
 と考えるようになり、金縛りに遭う恐怖心が金縛りに遭う楽しみになっていったのです。

 つい先日、筑波大学の調査で小学生の1割が抑うつ傾向にあり、「よく眠れない」「やろうと思ったことがうまくできない」「落ち込むと元気になれない」「何をしても楽しくない」「たいくつ」などという回答が10%を超えたそうです。
 朝から寝るまでを管理されている子どもたちが、自由な創造性の中で生きられるわけもなく、えらく納得させられる結果だなあと思いながら、もし自分が今の子どもたちのように育っていたら、「金縛りを楽しむ」何ていうことはできなくて、身動きができない状況の中で、きっと抑圧され続けて生きなければならないという恐怖心だけが増幅され、恐怖で「夜眠れない」何ていうことが起こったんだろうな、などと考えていました。
 金縛りは睡眠不足や不規則な睡眠、ストレスなどが原因で、浅い眠り(レム睡眠)の時に身体はぐったりと寝た状態なのに脳が目を覚まして起きる現象とか…。別に霊によって引き起こされるものではないのでご心配なく! 一応付け加えておきます。

 


**7月5日(月)掲載**
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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