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2019年10月15日 (火)

第109回「ジェンダーフリー その2」

 「専業主夫っていった場合の中身は、やっぱり“子育て”が中心になるんじゃないかなあ。もちろん家事労働って子育てだけじゃないんだけれど、子育てを除いた家事労働だけで主夫っていうのはほとんどあり得ないんじゃない? 家事の量も極めて少ないわけだし…。その程度だと主夫っていう言い方しないよね」
「まあ、そうですよね」
「専業主婦って言っても、子どもに手がかからなくなると徐々にパートに出る時間が増えて、子どもが高校に入るころには教育費のこともあって、ほとんどフルに働いてる人もいますよね。私の場合は、自分で会社をやってるからパートとはちょっと違うけど、状況は同じですよ。だから、一般的に専業主夫っていった場合、皆さんがイメージしてるのは、おそらく“子育て中の家事労働”って考えていいと思うんですけどね」
「そういうことなんでしょうね」
「そういうことで言えば、主夫っていうのは近所との付き合い方みたいなものの中に主夫か主夫じゃないかのひとつの基準があるような気はします。子どもを育てるには、母親同士の関係ってどうしても必要だから。私が翔(かける)を育てているとき、ウチのマンションの隣の公園で翔を遊ばせながら近所のお母さんたちと話をしていたら、ちょうどそこへ妻が帰ってきて、“あなた、ああやって女の人たちとどんな話してるの?”って言われたんですよ。“どんな話って、普通の話だよ。今晩のおかずは何にする?とかどこどこの薬局でトイレットペーパーが安かったとか…”って答えたら、“それで違和感ないの?”って妻は言うんですよね。そう言われても”はあ?”っていう感じで、私全然違和感ないんですよ。そこで、違和感があるようだとなかなか主夫にはなれないんじゃないかなあ?」
「はあ…。それってけっこうすごいかも…」
結局、アンケートの電話は1時間半におよびました。
「いやー、勉強になりました」
「全然アンケートにならなくてすみません」
「とんでもないですよ。こちらで用意したアンケートの中身が勉強不足っていうか…」
「お役に立てなかったけれど、何かあったらまたいつでもご連絡ください」
というわけでアンケートの電話は終わりましたが、全然アンケートにはなりませんでした。

実際に主夫をやってみると、“性差”っていうものを嫌というほど思い知らされます。私がいちばん困ったのは、母乳が与えられないこと。わが家の場合は、妻が教員で職場も近かったこともあり、子育てについてはとても楽な社会的環境を与えられていました。産休もしっかり取れるし、場合によっては育児休暇も取れる。さらに仕事に戻ってからも、授乳時間が取れないわけではない。そんな環境の中ですら、「なんで私は母乳が出ないんだろう!」って何度思ったことか…。“子どもを産む性”と“子どもを産まない性”の違いは厳然とあります。“ジェンダーフリー”という言葉がそこの部分を否定するものなら、それは明らかに間違っていると言わざるを得ません。けれども“ジェンダー”の意味は全然違います。「男らしさ、女らしさは性別がある限りある」という言い方はどう考えても、そこを取り違えているんじゃないのかな?
「男らしさ」という言葉から連想する言葉は、「たくましい」とか「包容力がある」とか「決断力がある」とか、そんな言葉じゃないかと思います。「女らしさ」という言葉からは「優しい」とか「きめ細やか」とか「気配りができる」とかかな?
「女らしい」っていう言葉から物事を肯定的に捉える言葉を見つけるのって意外に難しいね。「女々しい」とか「女の腐ったの」とか「ぐずぐずしてる」とか、けっこうそんな言葉が出てきちゃう。
励ましたりするときに「男でしょ!」とは言うけれど、「女でしょ!」とは、あんまり言わない。「女でしょ!」って言うときは、行動を否定されるときだよね。
常に男は肯定的な存在としてみられているけれど、女は否定的な存在としてみられている。だからそういうことが起こるんだよね。
それが“ジェンダー”っていうことかな? 動物として本来持っているものとは全然関係ないのに…。
でも、それがあたかも生まれたときから違うように感じちゃうのもまさに“ジェンダー”なんだと思うけど…。


**5月17日(月)掲載**

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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