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2019年7月

2019年7月 9日 (火)

第107回 「変な画家 その2」

「私の妻はナースをしていて、週に2回は私が子どもの世話をしてた」
プライスが言いました。
(本当はプライスが言ったんじゃなくて、通訳の大谷さんが言ったんだけど、一応通訳は影に隠れてもらって。でも、ここの部分はプライスがそう言ったのがわかったんだけどね。「おお、何て言ったかわかったよ」なーんて感動しちゃったりして…。ちょっと次元が低いね)

「ちょっとの時間ならいいけれど、小さい子どもを一日ずっとみるって大変ですよね。毎週みてたんですか?」
「そうそう。妻はずっと働いているからね」
「少し大きくなってからならいいけれど、小さいうちはほんとに大変ですよね。ちょっと目を離すと何をしでかすかわからない」
「そうそうそうそう。ずっと子どものあとについていかないとね」
「私が子どもを育てることでいちばん大変だったのは、とにかく休めないこと。具合が悪いからちょっと横になりたいと思っても、子どもはそんなことおかまいなし。熱があろうが下痢をしてようが、子どもには必ず食べさせなくちゃならないわけだから、具合が悪いなんて言ってられない」
「そうそうそうそう!! 私もずいぶん経験したよ。でも、子育てって楽しい!」
今度は私が、
「そうそうそうそう!! 日本のような社会の中で男性が子育てにかかわれないのはかわいそう」
「イギリスでは男性が子育てにかかわることはそんなに珍しい事じゃない。女性が働いていれば当然男性が子どもをみることになるわけだから…」
「ずいぶん変わったとはいえ、日本の場合は、子育てについてはほとんど専業主婦の仕事ですからね。その背景には、男女の賃金格差の問題とかがあって、男性が関わりたいと思っても、日本ではそう単純にいくものでもないんですよ。女性が男性と同等に働く機会が与えられて、さらに女性が働こうという気持ちになる。そこまでの環境が整って初めて、男性の“子育てにかかわろう”っていう気持ちが問題になる。日本でも、妻が出かけてるちょっとの間を夫が埋めるというところまでは来てるけど、“子育て”っていうレベルからはほど遠い。ちょっと穿った見方をすれば、“子育て”という方にウェートがあるんじゃなくて、“女性が子育てから逃れる”方にウェートがあって、子育ての穴を男性が埋めてるって感じ。それはそれでいいんだけど、今プライスが言ってる“子育てって楽しい”っていうこととはちょっと方向が違うような気がする」
「そうね。直隆の言うことはよくわかる。たぶんその通りだと思う。子どもを押しつけられるっていうことじゃなくて、子どもをみる権利があるっていう意識の問題だよね」
「もうずいぶん前の話になるけど、イギリスの議員が国会の議場に赤ん坊を連れて行ったっていうことが話題になったことがあったけど、あれにはちょっとビックリした」
「私にはちょっと記憶がないけれど、充分あり得るだろうね。それはイギリスでは許容されることだと思う」
「イギリスでは記憶に残らない程度のことっていうことかなあ??? 私はすごくよく覚えてるけど」
「そうかもしれない」
「男がごく普通に子育てができるようになるには、そういう社会の成熟っていうか、意識の成熟っていうか、そういうものが必要なんだろうね」
「まあそういうことなんだろうね」
結局、2時間もしゃべっちゃいました。

「パーティを開いても、妻は流しに食器を積んでおくだけ。私がやればあっという間にすごくきっちり片付くんだ」って、威張ってみせるプライスは、私より2歳年上の48歳。でも、とってもかわいい無邪気な坊やのようでした。
秋にはまた来日の予定です。今度はどんな話をしようかな???
秋までには、英語を勉強しとくからと言ったら、
「おお、私も日本語を勉強しておかなくちゃ」
と言っていました。

**4月26日(月)掲載**

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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第106回「変な画家 1」

私の陶芸教室に併設したギャラリーで、先週から昨日(18日)まで、企画展をやりました。17年間陶芸教室をやってきましたが、ギャラリーの経営は初めて。わからないことだらけで、何をどうすればいいのか全然わからない。一応、賃貸をメインにするつもりなので、お借りいただける方があれば、1週間ポンと貸してしまって、私の方でやることは何もないのだから問題ないわけですけれど、まだまだ宣伝が充分とは言えないし、お借りいただくと言っても、ギャラリーという性質上、作品がないとダメなわけだから、「はい、明日から」というわけにいかない。今の段階で予約が取れているのは、この秋が一番最初。

それまでウチの企画展と画商さんに借りていただいてつなぐことになりました。知り合いをたどっていってやっと一人の画商さんに辿り着き、そこからまたどなたかをご紹介していただいて、広げていく。ところが、困ったことにその画商さんとの付き合い方が全然わからない。何がなんだかわけがわからず、ゴチャゴチャやってるうちに、どういうわけか大阪のプロモーターの方と知り合うことができて、「アンドリュー・プライス」というイギリスの作家の展覧会を開くことになりました。

「それじゃあ、会期の2日前くらいに絵が着くように送りますから。プライスの来場は、必ず土日のどちらかは入るようにということにしていますので、4月の16、17日ということでいいですかね。社長さん英語は大丈夫なんでしょ?」
「いや、それが…。全然しゃべれないんですよ」
「いや別に通訳もつけますから大丈夫ですけどね」
「はあ…」

てな具合で、最初からプライスのプロモーターに押されっぱなし。会期は決まったものの、どう準備すればいいのか、段取りが全然わからない。とにかくDMのハガキだけは作って、陶芸教室の生徒さんや知り合いに約1000通配りました。

ところが期日が近づくにつれ、本当に絵が送られてくるのか心配になりました。確かに約束はしたけれど、契約書を交わしたわけでもなく、口約束だけで信用しちゃってよかったのかなあ???

30数点の絵が本当に届いたときは、ホッとしました。
いよいよプライスが来る日。
「初めてあったときはなんて言うんだっけ? “How do you do?” “Nice to meet you!” そんなんだったっけ?」
なんて言ってるんだからどうにもならない。

そんな不安を吹き飛ばしたのは、プライス本人でした。
いやいや、もう話し好きで話し好きで、とにかく話し出したら止まらない。女性の通訳の方がそれを全部同時通訳で日本語に直してくれるから、なんだか自分が英語が話せてる気分になって、どんどん話が弾んじゃう。プライスもちょっと変わった人で、画家としてきてるんだから、普通だったら絵の話になるんだろうけど、お子さんの写真なんかを見せちゃって、最初からすっかりプライベートな話。イギリス人て、アメリカ人よりも堅くて保守的っていうイメージがあったので、ちょっとビックリ。

私が主夫をやってたっていう話から、だんだん男の子育ての話に。どうやらプライスも、子育てにかなり関わっていたらしい。

ちょっと前置きが長くなっちゃったので、プライスとの“男の子育て談義”はまた次回。


**4月19日(月)掲載**

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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