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2019年6月10日 (月)

第103回「悪でも××になれる?」

先週、妻が勤務していた高校の職員のOB会があって、30年程前に同僚であった先生方と妻は会食をしてきました。ちょうどそのころは私が在学中で、帰ってきた妻から聞く先生方の名前は、もちろん私も知っています。というより、妻と私にとっては、「あのころはずいぶんと迷惑をかけたなあ」という感じ。

「××先生と××先生が来てたよ」
「ああああ。××先生とは数学の授業のやり方でぶつかっちゃって、白紙で答案出したんだよね。敵も然る者でさ、答案を返すときになったら、私の答案用紙で飛行機折って“零戦が飛ぶ”って飛ばして返すんだからね」
「そうそう、そんなことあったんだよね」

「いい人なんだけどさ、担任だったでしょ。だから、よく呼び出されてなんだかんだ言われたよ。“大澤(私の旧姓)、しっかり勉強してるか?”とか“あんまり音楽ばっかり夢中になってないで、いろいろなことに目を向けなくちゃダメだぞ”とかね」
「そんな言い方っておかしいよね。そういうことで言えば、サッカー部の子たちなんか、みんなサッカーにばっかり夢中になって、勉強なんか全然してなかったもんね。“サッカーにばっかり夢中にならないで、他のことにも目を向けろよ”なんて言ったら笑われちゃう」
「ハハハッ、まったく! 本当は、“あんまり大関先生と親しくなるなよ”って言いたかったんだよね。そんなストレートには言えないもんね」

「一応直接お世話になった先生方には謝らなきゃと思って、“当時は大変ご迷惑をおかけして…”って言ったんだよね。そうしたらなんて返ってきたと思う?」
「???」
「“音楽室は火事出したもんな。あのときはオレも行ったんだ”とかね、“そうそう、あのときの緊急放送は私、私!”とか言うんだよね。“違う、違う! そんなこと謝ってるんじゃなーい!”って叫び出したいくらいだったよ」
「そんなことまで覚えてるんだあ!?」
「そうなんだよねえ。それだけじゃなくて、××先生なんて“大関先生はいろいろご活躍でテレビなんかにも出てらっしゃったでしょ。ウチの学校のこと、とっても有名にしてくださって私も嬉しいんです”だって。“はあっ?”って感じだったよ」

「どうなっちゃってるんだろっ? 教師と生徒が恋愛するなんて褒められたことじゃないのにね。暴走族やってたような奴もいたし、いかにも不良なんて感じの奴もいたけれど、教師を引っかけたっていう言い方すればさあ、私もかなり不良だよねえ。“悪でも主夫になれる!”ってやつで、そこまでやったら評価の対象かね?」
「“悪でも××になれる”っていうのは、××の部分がもっと社会的に身分が高いって言われるようなものじゃないとだめだよ」
「そりゃ、そうだね。主夫じゃあね。弁護士とか医者とか俳優とか…」
「そうそう。今流行ってるんだよね、そういうの。昔は暴走族だった弁護士とか俳優とか。ほらっ、『ジェネジャン』(日テレの番組)で一緒だった宇梶さんとか」
「ああああ。でも“悪でも××…”って考えるのは危ないよ。“あの弁護士さん、昔は悪だったんだって”って言うんならいいけど、“悪でも××…”って言うと明らかに職業に貴賤をつけてることになるし、だんだんエスカレートすると“悪じゃないと××になれない”なんて勝手に曲げて解釈する子も出てくるかもよ」
「そうかもね」
「誰が考えたって、何になるにしても本当は悪じゃない方がなりやすいんだけどね。それがどこかに飛んじゃうのはちょっと違うよね」
「うんうん、そうだね。そうするとやっぱり、ウチの場合は“悪でも主夫になれる”っていう部分を評価してもらったんじゃないわけ?」
「なわけないでしょ! 主夫はあこがれの職業じゃないの! そりゃあね、高校のころはずいぶんいろいろな教員と喧嘩したよ。だけど、××先生にはいろいろお世話になったの。だから、向こうもあんまり悪く思ってないんじゃないの?!」
「そんなこと言うけどね、今や主夫はあこがれの職業かもよ?! ××さんも××さんも、退職したら自慢そうに“今は主夫してます”って言ってたもん!」
「そんなもんかねえ…」

どうも最近、個性重視に偏ってるっていうか、“昔は××だったけど、××になりました”みたいな報道や出版が多いような気がします。それはそれで確かにすごいことだと思うけれど、報道したり出版したりする側は、もっと気を遣わないといけないんじゃないかなあ。“悪”だったことはいいことではないのに、うっかりすると“悪”だったことがいいことにすり替えられちゃうことがある。だいたい“××になれる”と言えば、必ずその職業の部分は一般に地位の高いと言われるような職業がくるに決まってる。まさか“悪でもホームレスになれる”なんて言うわけないんだから。新聞なんかを見てるとそこの部分にはずいぶんと気を遣った記事になってることが多いけれど、TVや雑誌は扱いがとっても乱暴。職業についての貴賤じゃなくて、本当に自分は何をしたいのかをじっくりと見極める力を持ったような子どもに育てたいですね。


**3月30日(火)掲載**

 

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

 

 

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