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2019年4月26日 (金)

第97回 「とーりゃ!」

「ったくう! あたし仕返ししてやろうかと思ったよ」
「なに? またなんかあったのかよぉ?」
「だってさぁ、公園にいつもいる“ガキ”ったら、いっぱいオモチャ持ってきてるのに蓮(れん)に貸してくれないんだよ。蓮は自分のをちゃんと貸してあげてるのにさっ」「そりゃまあ、そういう時期なんだよ。“自分の物”っていう意識が育ってくる時期なんだからしかたないだろっ」
「違うの! だからぁ、そんなのは蓮だってあるからいんだけどぉ。ちょっとそいつのオモチャ、蓮が持っただけで飛んで来て、いきなり蓮のこと突き飛ばしたんだよ。それで自分のオモチャ引ったくっていったんだから!」
「あらあら」
「蓮なんてさぁ、いきなりだったから何が起こったのかわからなくて、ビックリしてしばらくじっと立ってた。それからあたしのとこまで走って来て泣き出したんだよ」
「かわいそうに…」
「だけどさぁ、そういうことあったら普通お母さんが“××ちゃん、お友達に貸してあげなさい”とか言わない? この前、蓮も同じようなことやったから、私、蓮のこと怒って蓮と一緒にオモチャを貸してあげにいったよ。親だったら普通それぐらいはするだろっちゅーの」
「はぁ、なるほど。そりゃ、そうだ」
「見てたくせに、ぜーんぜん知らんぷりだからね。ったく、どうかしてんだよ、最近の若い母親は!」
「っとっとっと、お前も“最近の若い母親”だろっ? それで、母親に“仕返し”するの?」
「違うよっ! 仕返しするのはその“ガキ”だよ。ちょっと母親が目を離した隙に思いっきり蹴飛ばしてやろうかと思った」
「ゲーッ、怖っ!」
「当たり前じゃん。蓮は突き飛ばされたんだよ!」
「そりゃそうだけど、子どもの責任じゃないだろっ。親のしつけの問題なんだから」
「そう思うよ。でもね、でもね、親が知らんぷりして何もしないんだから、あたしが思い知らせてやるぅ!っていう感じだよ」
「何考えてんだか…」
「そうは言ったって、“って思った”っていうだけだよ。結局、しっかり蓮を抱きしめてやっただけだもん」
「蓮がその“ガキ”にオモチャ貸してあげられたら、次はその“ガキ”も蓮に貸してくれるかもよ」
「そうだね。蓮にもよく話しておくよ」

ダーッ、びっくり、ビックリ、びっくり、ビックリ!
「警視庁青梅署(東京都青梅市)に勤務する30代の巡査が1月、地元の柔道教室で指導中に小学生2人を強く投げ飛ばし、1人に鼓膜が破れる大けがを、もう1人にも打撲などのけがを負わせていたことが分かった。巡査の子どもが学校で2人にいじめられていたといい、同署の調べに「結果的に仕返しと受け取られても仕方がない」と話しているという。」(2月13日 朝日新聞より)

ああああ、どうしてこういう事件が起こるのかねえ???
“投げ飛ばした”巡査の自分の子どもを思う気持ちがわからないわけじゃあない。でもね、ほんとに問題なのは“いじめてる子”たちなんじゃなくて、そういういじめを放置してる学校の問題なのに…。

この柔道教室は「青梅市が小学生などを対象に企画。市内の体育館で週2回、夕方開いている。巡査は柔道団体の推薦を受け、ボランティア講師として数年前から参加していた」(朝日新聞)とのこと。
巡査自身も“いじめてる子”たちの教育に関わっていたわけで、もっと深いところで教育を理解しないといけなかったんじゃないのかな?

最近、ボランティアの人たちを教育に関わらせる動きが盛んだけど、教育に関わるっていうことの責任をもっとしっかり感じないといけないよね。それにしても、この巡査、“親”としても、“教育に関わるボランティア”としても、そして何よりも“巡査”としても失格だね。 個人的に“仕返し”をしなくてすむように、学校ももっとしっかりしないと…。いじめられてた巡査の子にも、そして巡査に“とーりゃ!”と投げ飛ばされちゃったいじめてた子にも、本当に謝罪しなくちゃしけないのは、学校なんだよね。

**2003年2月16日(月)掲載**

※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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