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2019年3月 6日 (水)

第90回「いいお産 その2」

前回のつづき。

「お産」ていうのは医療なのか医療じゃないのかは難しいね。5番目の息子を妊娠した時、妻は44歳だった。近くの病院に通ってはいたけれど、とにかく三森助産院以外で産むなんていうことは考えられなかったので、三森先生に連絡を取った。かなり高齢っていうことで、妻も私も神経質になっていて、三森先生にお願いするにも「大丈夫でしょうか?」みたいな聞き方になる。そのとき返ってきた三森先生の言葉は「妊娠したっていうことは産めるってことよ」だった。三森先生のその言葉を聞いてどんなに安心したことか…。それから先は、お産のことより生まれてくる子どものことに気持ちは移ったんだよね。

ところがその後、三森先生に知り合いの32歳で初産の人を紹介したら「30歳以上で初産の人は引き受けてないの」ってきっぱり断られてしまった。後になって考えてみると、そのころの三森先生は肝臓癌の末期で、もう手の施しようもない状態。ウチの子が生まれる半年ほど前に開腹手術をしたけれどどうにもならなくて、ほとんど手を打てないまま閉じたとか…。まあ、そういう事情もあったのかもしれない。それにしても、三森先生は30歳を線引きに使ってた。要するに30歳を過ぎた初産は、「医療の分野」ってお考えになっていたのかもしれない。

妻の親戚に産婦人科医がいるんだけど、産婦人科は訴訟になるケースがとっても多いんだって。そう言われてみれば「そうかも」って感じ。「お産」て当たり前のことなのか医療なのか、よくわかんない。当たり前のことって思ってるのに事故が起こることも多い。それで訴訟になっちゃうらしい。なんでもなく生まれてくれば医療じゃないけど、ちょっとでもドクターが手を加えれば医療になる。それで逆に故意に手を加えて、治療費を稼ぐ。三森先生曰く「だからすぐ(会陰を)切っちゃうのよねえ。病院はほとんどが異常産」。

出産をするお母さんや家族のほうも揺れていて、「いいお産」の定義が難しくなってるんだと思う。なるべく自然にお産をするのか、それとも「安心」を中心に据えるのか、それともお母さんの「私、産んじゃった」的な感覚でお産をするのか…。

どんな人から出産の経験話を聞くかによっても変わるよね。安産だった人から話を聞けば、「出産は安全」って感じるだろうし、難産だった人から話を聞けば「出産は危険」って感じるだろうし…。私も出産についての講演をするような立場になっちゃったので、いろいろな人から話を聞く機会があるけれど、どうも出産っていうのは、ことの性質上あまり公にはなってない。だから、ある意味病院のやりたい放題っていうことも言える。

普通にいったらそんなに危険なはずはないのに、やたら危険を強調することで「ウチの病院は安全ですよ」って言って妊婦を集める病院、あるいは前回登場させたようなお産をすっかりイベント化させて、外から見える部分だけをやたらきれいに見せている病院…。そこの病院の看護師や助産師が言うには「最近のお母さんは自分で産もうとしないで、産ませてもらおうと思ってる」んだって。その通りだと思う。でもね、それは病院がそうさせてるか、あるいはそういうお母さんばかりを集めてるんだよね。

やっぱり本当に「いいお産」をしようと思ったら、客観的にいろいろな情報を集めないとね。何となくの評判も悪くはないけれど、基本的に出産をした人は、よほどひどいお産じゃなければ、自分がしたお産が「いいお産」だったって言うのは当たり前。だれだって一生に何度もない出産はいいものであったって思いたいに決まってるんだから。

お産についての評判がとてもいい産婦人科医を何人か知っているけれど、よくインターネットで流れている情報と私の知っているドクターの人柄とは全然違うよね。だからそこが悪い病院っていうことじゃないけれど、「いいお産」をするには、自分の目で見て、耳で聞いて、たくさん情報を集めた方がいいよ。そして何より大切なことは、何が「いいお産」なのか、しっかり夫婦なり家族なりで話し合うことだよね。

看護師さんから、お産に立ち会った話を聞いたので、2回つづきでお産の話になっちゃった。なんだかすっかり自分の子どもも赤ん坊に戻ったような気がしてきちゃった!


**2003年12月8日(月)掲載**
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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