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2019年2月10日 (日)

第70回「”子育て支援”という名の子どもの受難」

春子の携帯が鳴った。レミからのメールだ。「今日はカレーライスです」

嫁からのメールを最初はうれしく思った。
「リュウ君てとっても優しいしぃ、私、大好き!彼といると癒されるっていうかぁ、ホッとするんです」
ちょっと現代風なところはあるが、おっとりしたいい子だと思った。どちらかというとおっとりしている自分ともうまくやっていけそうだった。

リュウとレミは、俗に言う「できちゃった結婚」で、半年後には子どもが産まれた。それから7ヶ月。
「私仕事が忙しいので、悪いんですけどお母さん“萌”を保育園まで迎えに行っといてもらえます?」
まだこのあたりまではよかった。
「夕飯も作っといてもらえます? 萌にも食べさせて寝かせといてもらえると助かるんですけど…」
最近では当たり前のように、夕飯のメニューがメールで送られてくる。
「今日はカレーライスです」
「今晩はスパゲッティにしてください」
それを作ったら、萌に食べさせて寝かせる、そしてさらにリュウとレミの分も電子レンジで温めて食べられるようにしておけという意味だ。
春子もどこか変だと思う。けれども、自分がしなければ萌の面倒は誰が見るのだろうと思うとやめられない。

「リュウ、飲んできたでしょ!? お酒臭い! 私だって友達と飲みたいと思ったって萌のことあるから我慢して帰ってきてるのにずるーい! リュウはウチのこと何にも手伝わないんだから、私にコーラ買ってきてよ!」
もうそろそろ限界だなあ…。春子は思う。やっぱり子どもは自分たちの手で育てないと…。

20日(日)の朝日新聞朝刊にさいたま市の子育て支援センターオープンの記事が載っていました。場所は「エイペックスタワー」の3F。何の巡り合わせか、私が陶芸教室に借りることになっている部屋の真上です。さいたま市の子育て支援の拠点となるところで、主に2歳児までの保護者らを対象に、子育て不安についての相談や子育てサークルの活動支援、ベビーシッターなどの情報提供をするんだそうです。さらに記事によると、今後は浦和駅を利用する保護者らの出勤時に子どもを一時的に預かって市内の保育園へ送り迎えし、帰宅時に保護者に戻す保育ステーション事業も取り入れるとも。「子育て支援」っていうことにはもちろん賛成ですけれど、これって本当に「子育て支援」なんでしょうか?

まあ、子どもを育てている人を支援するっていうことでいえばその通りなんでしょうけれど、誰のための子育てなのかっていう観点からすると、論理が逆になっているように感じます。本来、保護されなくてはいけないのは、子どものはずなのに「子育て支援」という名のもとに保護されているのは母親だけです。もちろん、遊んでいる人たちばかりではないけれど、最近幼児が被害にあった事件を見てみると、ほとんどの場合が親が子どもから目を離して遊んでいるケースが多くないですか?もう少し基本に立ち返って、父親や母親が子どもと接する時間を十分にもてるような子育て支援をする必要があると思います。

高度成長と急激な核家族化は、家庭から父親を奪いました。ここへきての女性の社会進出は著しいものがあります。父親を家庭に帰すことをせずに今度は母親を家庭から奪ってしまうのでしょうか?私は常々、「女性が男性化する社会ではなく、男性が女性化する社会にするべきだ」と主張してきましたが、まさにそのことが今問われているような気がします。子育て支援という名のもとにますます子どもが見放されるようなことがないといいのですが…。

萌ちゃんは38℃近い熱がなかなか下がらないのだそうです。小児科の先生の診断では「特に悪いところはないので、集団の中にいるためのストレスかなあ?」萌ちゃんは毎朝8時から夜7時まで保育園に預けられています。


**2003年7月22日(火)掲載**
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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