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2019年2月10日 (日)

第64回 「怒る」と「叱る」

ちょっと今回は理屈っぽく…
「あなたたち、『怒る』と『叱る』の違いがわかってる?」

ある保育士が保育実習にきている学生たちに言いました。学生たちは、漠然とした違いは感じるものの自信がなかったので、その後の質問の矛先が自分に向けられないように、全員が曖昧に目を伏せました。「あなたたち、そんなこともわからないで子どもたちと接してたの? もっと勉強しなきゃダメよ!」怖い怖~い保育士の一撃が学生たちの上に落ちました。

さて、みなさんは「怒る」と「叱る」の違いがわかりますか?

「怒る」が感情的、「叱る」は理性的っていうような感じがしますよね。怖い怖~い保育士もそういうことが言いたかったんだろうと思うし、学生たちもおそらくその通りに感じていたんじゃないかな?
やっぱりこういうことは、きちっとしなきゃいけないから広辞苑を引くと、

・「怒る」 1)いかる。腹を立てる。 2)叱る。
・「叱る」 (目下の者に対して)声をあらだてて欠点をとがめる。とがめ戒める。

ということになります。さらに、

・「とがめる」 1)気にかける。取り立てて気にする。 2)取り立てて言う。 3)取り立てて問いただす。責める。非難する。
・「戒める」 1)(禁じられていることを)教えさとして、慎ませる。 2)過ちのないように注意する。用心させる。 3)行動を禁止する。とどめる。4)罰する。(「戒める」については、明らかに意味の違うものは省略しました)

こうして意味を調べてくると、目上の者が目下の者に対して「怒った」場合は「叱る」と言えなくもないっていうことがわかってきます。ここで重要なのは、「叱る」という言葉は、常にそこに身分の違い(年齢の上での上下、地位の上での上下といったような)が存在するということです。私も、子どもに対して「教えさとす」ということがあってはいけないとは思いません。けれども、「教えさとす」ということは、「教える」わけだから、その内容が絶対に正しくなくてなりません。子育てにこの「絶対に正しい」っていうことがあるかっていうと、これが難しい。

例えば、食事の時に食べ物をこぼす子がいたとする。あるお母さんは「こぼさないように食べなさい」と叱った。あるお母さんは、子どもの自主性を育てるためにこぼすことを容認した。どちらも間違ってはいないですよね。けれども、目に見える現象はまったく逆の結果になる。結局そこに「絶対に正しい」ということは存在しない。

保育や教育の現場で、「怒る」ことはいけなくて、「叱る」ことはいいように語られることがよくあります。おそらく前出の保育士もそういうことが言いたかったのでしょう。けれども、私はまったくその逆に「叱る」がいけなくて、「怒る」がいいのではないかと思います。
子育てや教育を語るときに「子どもの目線」という言葉をよく使います。私はもう少し踏み込んで、「子どもと対等」とか「子ども扱いしない」とかいう言葉を使います。「叱る」という言葉は、上下関係があるときに成り立つ言葉だから、もし子どもと対等と考えたら「叱る」ということはなくなって「怒る」ということになる。

叱られたら、そこに上下関係が存在するわけですから反論はできませんが、怒られたのなら反論の余地がある。私は子育てや教育にはそれが重要だと思います。子どもにも意見を言う余地があるからこそ、子どもは考えるのであり、自立していくものです。また、それが自分の行動に責任を持つことにもつながっていく。

子どもに腹が立つときがあったら、「しつける」なんていうことは考えずに、しっかりと「怒って」みたらいいんじゃないのかな? それが子どもを一人の人格として認めることになると思うんです。

ただし、自分の力(腕力)の方が強いことを笠に着て「怒った」ら、それは不平等。それはやっちゃいけない。子育てや教育に「正しい」なんていうことはまずあり得ないんだから、やっぱり保育士や教員も「叱っ」ちゃいけないんだよね。


**6月9日(月)掲載**
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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