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2019年2月12日 (火)

第80回「万引き」

「大関さんのお宅ですか? 今、お宅のお嬢さんを警備員室でお預かりしているんですが」
「はっ?」
「こちら丸広百貨店ですが、ちょっと万引きの疑いがありまして、警備員室でお嬢さんからお話を伺っているところなんです」
「…。本当に万引きをしたんですか?」
「お嬢さんは否定しているんですが、その疑いがありまして…」
「そうですか。じゃあ、はっきりしてないんですね?」
「はあ、まあ…。疑いがあるということです」
「わかりました。じゃあ、すぐ伺いますから」

「ウチの子に限って…」なんていうことが言えるわけがない。自分の子どもとはいえ、犯罪を犯すことがある。なんて考えながら、それでもなお「まさか」と思いながら、飯能の丸広百貨店まで出かけていきました。部屋には店長の他、社員が一人、警備員が一人、そして娘の麻耶と麻耶の友達が一人。

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。どういう状況だったんでしょうか?」
「お嬢さんとこちらにいらっしゃるお友達が店内をいろいろと回った後、CD売り場の辺りでしばらくしゃがんでいまして、警備員からするとちょっとその様子が不審に思えたので、万引きしたのではないかと…」
「それで、何か商品を持ってたんですか?」
「いえ、そういう物は…」
「持ってなかったんですか?」
「はあ、まあ。一応、荷物は調べさせていただいたんですが…」
「じゃあ、万引きをしたというわけじゃないんですか?」
「はあ、その疑いがあるということで…」
「麻耶! お前しゃがんで何やってたんだ?」
「しゃべってただけだよ」
「何も取ってないんだな!?」
「取ってないよぉ!」
「何も乱暴されてないな?」
「別に…。ここに呼ばれて荷物調べられただけだよ」
「「万引きをした』っていうことじゃなくて、『したかもしれない』っていうことなんですか?」
「はあ、まあそういうことになりますねえ」

店長も歯切れが悪い。警備員としてはかなりの確信を持って連れてきたようなのですが、他に仲間はいない、品物をどこかにおいた形跡はない、荷物の中からも出てこない、というわけで、はっきりとした証拠もなく、双方が謝って店を出てくるという変な結末になりました。娘が高校1年生の時のことです。
麻耶は4歳のころ、スーパーの棚からお金を払わず持ってきたガムをトイレに隠れて食べていたことがあります。便器の陰から何枚もの包み紙が出てきて気づきました。ガムを買い与えるということをしなかったので、お金を払わずに持ってきてしまったことと、普段与えられないガムを食べているということに対する罪悪感のようなものが4歳の麻耶にもあったのでしょう。

9月20日の新聞に「大人の万引き」の記事が出ていました。ホームセンターという限られた店種ではありますが、埼玉県内のある店では「ここ1ヶ月で見つかった万引き犯はすべて40歳以上」というのにはちょっとビックリしました。青少年による犯罪の増加や凶悪化がクローズアップされている中で、お金の価値、労働の価値、犯罪の意味をわかっているはずの大人の万引きが増えていることはとても残念です。30歳以上の万引き犯の比率はどんどん増えて昨年はとうとう50%。未来を担う子どもたちのためにも手本である大人でありたいですね。

万引き犯灰色だった麻耶は、最近ではすっかり「モラリスト」になって、態度の悪い大人や高校生の文句ばかり言っています。
「まったくそこの高校の生徒の交通マナーはなってないんだから! あんまりひどいから学校に文句の電話してやった。そうしたら電話に出たやつの態度も悪いから、『そういう対応してるから生徒も悪くなるんだ』って怒鳴りつけてやった」
なーんていう調子。
やっぱり「ウチの子に限って…」だったかな?
万引き犯が、その場にしゃがみ込んでしゃべってるなんて、普通はないよね!


**2003年9月29日(月)掲載**
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

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