第71回「特別養護老人ホーム」
今日は困っちゃったなあ…。
都内で越境入学をさせていて学校でトラブルになった話を聞いたので、その話にしようって決めていたんだけれど、昨日(27日)「浦和教育カウンセリング研究所」の仕事で秩父の大滝村まで行って特別養護老人ホーム(特養ホーム)を2カ所見学させてもらったら、あまりにも大きな衝撃を受けて、他のことがすっかり頭のどこかに飛んじゃった。越境のことはまた今度にして、今頭にあること書くしかないかなあ…。
大滝村は埼玉県の一番西に位置し、群馬県、長野県、山梨県、東京都と隣接しています。たった一つの村が4つの都県と接しているなんて、それだけでもすごいね。これまで峠越えだった国道140号線の山梨県へ抜けるルートに平成10年雁坂トンネルが開通して、かなり便利になりました。子どものころの私の印象では、「埼玉県の一番奥の観光地」っていう感じでしたけれど、雁坂トンネルができたことで「秩父から甲府への通り道」っていう印象に変わりました。雁坂トンネルが開通した年に山梨県側から埼玉県側に抜けたことがあるのですが、昨日久しぶりに訪ねてみて、やはり「観光地」というイメージから「通り道」というイメージになったなあと感じました。
大滝村を訪れたのは、NPO法人の方が「教育施設を作る」についての意見を聞かせてほしいということで訪ねたのですが、大滝村を一通り回って見せていただいている中で、2カ所の特別養護老人ホームも見学させてもらいました。
大滝村はかなり激しい過疎化の波にさらされているそうで、人口流失がどこで止められるかが大きな課題だということでした。産業がないため、若年層の流失は深刻で、人口構成における高齢化が進み、子どもがいなくなってしまったため、小学校が廃校になっていました。国の問題として取り上げられている「少子化」の問題とは違った意味での「少子化」問題がここには存在していました。
「過疎」という問題は、車も通らない遠い山奥や海沿いの町の話のように思っていましたが、交通量も比較的多く、ちょっと車で走れば都会というようなところでも深刻な問題になっていることに驚きを感じました。逆に都会の近くの村だからこそ、都会への人口流失がなおさら深刻になるのかもしれません。なんとか子どもを呼び戻して、村を再生させたいという大滝村の方の気持ちがとても強く伝わってきました。
『私たちは林業の世界で生きてきましたからねえ。そんなに目先のことを考えているわけではないんですよ。20年、30年、50年後の大滝村のことを考えているんです』
街の中で生活している私たちとはまったく違う子育ての大切さがここにはあることを感じました。
「特養ホーム」は約50名の方を30名あまりのスタッフで看ているそうです。入居者の方たちは重度の認知症(介護度からいうと重度ではないそうですが、私には重度に見えました)で、「こんにちは」と声をかけても返事が返ってくる人はまれです。中にはニッコリと微笑んではっきりしない言葉で「こんにちは」と返事を返してくれる人もいるにはいますが、多くの人は表情も変えずに車いすに座ったままです。集団で話をするわけでもなく、じっと車いすに座って、時折うつろな視線をこちらに向けてくる老人の方たちに、かなり大きな衝撃を受けました。
階段から落ちないように置かれた衝立、殺伐とした食堂、かなり高い位置に設置されたドアの開閉用ボタン…。何もわからずに集団の中で生きながら、死期のくるのを待っている老人に、私たちができることはなんなのか…
今まで社会を支えてきてくれたその老人たちに何か返せるとしたら、それはこれからの社会をしっかりと支えることのできる次の世代を育てることしかないのではないか、そんなことを考えながらウチに帰ってきました。
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