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2019年2月 6日 (水)

第30回 「安全な遊び」

 9月24日午後、金沢市の公園で上田竜也君(6)が、うんていの上から鉄棒と鉄棒のすき間に落ち、背負っていたランドセルと首が鉄棒に引っかかって窒息死するという事故が起こりました。お子さんを亡くした親御さんや周囲の方々の悲しみは、幾ばくかと思います。

 どう挟まったんだろうと不思議に思っていると、翌々日のワイドショーでこの事件を取り上げていて、図を使って詳しく説明をしていました。ここで言葉を使って説明するのはちょっと難しいですが、簡単に言えば、ランドセルの下側と竜也君の首が二本の鉄棒にひっかかってしまい、宙づりになってしまったということのようでした。

 普通では考えにくい状況で、まったく運が悪いとしか言いようのない事故でした。この事故はいくつかの原因が考えられます。

第1に、うんていそのものの構造(足がつかない高さであるとか鉄棒と鉄棒の間に人が落ちるだけの空間があるとか)。

第2に、簡単にうんていの上に登れる構造になっていたこと。

第3に、竜也君がうんていの上に登ってしまったこと。

第4に、竜也君がランドセルを背負っていたこと。

 主にこんなところだと思いますが、ワイドショーの中でインタビューに答えていた竜也君のお父さんとおじいさんは、遊具の危険性について非常に声高に訴えていました。お子さん、お孫さんを亡くしたものとして当然のことです。もし私がそういう立場に置かれたら、おそらくまったく同じように訴えただろうと思います。

 当然のことながら事故の場合、テレビ局はまず被害者に同情をする立場から報道をします。そこでワイドショーは何を第一に取り上げたか・・・。なんとランドセルの構造でした。鉄棒に引っかかったランドセルに問題はなかったのか・・・。ランドセルのメーカーにインタビューをしていました。いくらなんでもこれには無理があります。

 続いて周囲の状況を含むうんていの状況。実際に事故が起こっているのだから、問題がないわけはありません。うんていの高さがもっと低かったら・・・。うんていの上に上がりにくい構造になっていたら・・・。鉄棒と鉄棒のすき間がもっと狭かったら・・・。それはまったくその通りで、どれか一つでも状況が違っていればこの事故は起こらなくてすんだはずです。

 金沢市は25日、同種の遊具のある41カ所の公園を調査するとともに、うんていに立ち入り禁止テープを張って使用禁止にしました。けれども、これはちょっと変?私が生きてきた45年の記憶をいくら辿っても、うんていで窒息した事故の記憶はありません。事故のない安全な遊具を作ることも大事ですが、子どもに危険を察知する能力をつけさせることも大事なのでは?私はこういう逆説的な考え方(危険に触れさせて危険を教えるというような)はあまり好きではないのだけれど、ほとんど大きな事故も起きないような遊具が、たった一回の事故で使用禁止になってしまうことには、やはり抵抗があります。

 真(まこと)がまだ3歳だったころ、見沼代用水に落ちたことがありました。運悪くちょうど水かさが多いときで、土手の草の上をずるずると滑って川に落ちた真は、あっという間に水の中に消え、まったく見えなくなってしまいました。まだ1歳にもなっていない麻耶(まや)をおぶっていた私は、隣にいた5歳の女の子に麻耶を預け、川に飛び込もうと思ったまさにその瞬間、川の底を蹴って水面近くまで上がってきた真が見えたのです。やっとの思いで手を伸ばし、引き上げたのでした。今ではそこは護岸工事が終了し、フェンスが張り巡らされています。子どもたちは安全を手に入れたのですが、そこで失ったものは量りしれません。

 本当に危険なものを放置することは、大人の無責任、でも、子どもが大人になるために必要な機会を奪ってしまうことも、やはり大人の無責任。ちょうどワイドショーがこの事件が取り上げた日、新聞ではロープでできた「安全なブランコ」の記事が出ていました。座る部分が板でできた昔のブランコは事故が多かったということだったのでしょう。でも今度は、もしロープで窒息死する子が出てきたら、何でブランコを作るのでしょうか・・・。

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