第65回 「エキスを吸い取る」
陶芸を教えていると、いろいろな話になるんですよね。
陶芸の技術的な話はもちろんですけど、例えば「益子に行く」とか「笠間に行く」とかいう話になると、陶芸の話からだんだん離れて近くの観光地の話、さらに花の名所、いい温泉…なんていう風にね。今年はずいぶんお花見の話をしました。そんな話の中にけっこう私のプライベートな話も混ざったりしてね。
たまにTV局なんかから電話があると、「先生、またTV出るんですか?」っていう話になっちゃう。今までのことをよく知っている人はいいんですが、何も知らずに陶芸をやりにきてる人はわけがわからないので、そこで最初から説明をしなくちゃならない。そうすると「あ~、どっかで会ったことあると思ってたんだけど、私TVで見た!」なーんてね。またTVの出演依頼が何本か来ていて、今日も「出るときは教えてください」みたいな話から、「歳の差のある夫婦っていうのは、年上の人が年下の人からエキスを吸い取っちゃう」って言いだした生徒さんがいて、「だから妻は若くいられる」っていうんだよね。もちろんそれは夫婦に限ったことじゃなくて、歳が離れていればそうだって…。
だから、子どももおばあちゃんに育てられるとエキスを吸い取られちゃうので、おばあちゃんは若々しくなるけど、子どもはおとなしい子になっちゃうんだって。「はあ、なるほど…。そういえばウチの翔(かける)は曾祖母と祖母に育てられたから、確かに大人しい…」なーんて、えらく納得しちゃったりして…。
そんな単純なわけないっちゅーの!
でも、一理あるなって思うのは、やっぱり年輩で子育てを経験してきている人たちは子どもとの接し方が落ち着いているんだよね。その「落ち着いている」っていうのが重要で、あんまりせかせかぎゃーぎゃー怒らずに、ゆったり話しかけてあげるとどんなに小さな子どもでも、やっぱり落ち着いてゆったり(テンポだけじゃなくて、もちろん心もね)話すようになるよね。
さっき、7月で2歳になる孫の蓮(れん)と生後5ヶ月の沙羅(さら)、妻と娘と息子、それに私の6人で食事に行きました。孫はまだ小さいので、外食するっていうことはほとんどないんだけれど、今日はいろいろ事情があって迷ったすえにそういうことになっちゃった。ウチにいるときはいつも落ち着きのない蓮が、子ども用の椅子に座ったらビックリするほどおとなしくて、一人で一生懸命食べてるんだよね。「おーっ、いい子に育ってるじゃん」っていう感じ。ちょっと自慢に思ったりなんかしてね。
ちょっと妻と仕事のことで打ち合わせをしたいことがあったので、娘と孫二人は先に家に帰ることに。ちょうど娘が出ていくのと入れ替わりに、蓮とほぼ同い年くらいの男の子を連れた夫婦が入ってきて、私と妻から正面に見える席に座ったんだよね。それが珍しいことにお父さんと子どもが隣に座って、お母さんが子どもの正面に座ってるの。もう少し子どもが大きくなるとそういうこともあるんだけど、ちょっとあの年齢ではね…。食事の間中ずっと、お母さんは子どもに落ち着いてにこやかに接してるんだよね。子どもも一人でとってもおとなしく、食べてるの。「ほっ、ほーっ!」っていう感じ。
とても厳しいしつけをしてるなんていう風には見えなかったけど、あの子どもの落ち着き方を見ると、やっぱり子どもはお母さんの優しさをしっかり受けとめるんだね。もちろん、お父さんもとっても優しく子どもと接していましたよ。
それを見ていた私と妻も、とても優しい気持ちになりました。
孫を見ているおばあちゃんは、必ずしも子育てがうまいっていうわけじゃなくて、「最後は親の責任」っていう気持ちがあるから、ゆったりと孫の面倒を見られるっていうのもあるよね。私も孫に対しては無責任だもんね。
そうそう、話は戻るけど、年上が年下のエキスを吸い取っちゃうっていうのが事実とすれば、私は吸い取られちゃってるわけ???どおりで最近痩せてきたと思ってたら、吸い取られすぎてしぼんじゃってんのかな???
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