« 第73回「たった400人の島  その1」 | トップページ | 第75回「這えないのに這う沙羅」 »

2019年2月12日 (火)

第74回 「たった400人の島 その2」

粟島の東側(フェリーが着く港)が内浦、西側が釜谷。私たちが泊まるのは、西側の釜谷。フェリーが泊まる内浦は、それなりに賑やかで(何を基準にいってるのかねえ…。船が着く時を除くと、人なんて誰もいないんだけどね。本土からの船が着く時だけ、民宿のマイクロバスやワゴン車で賑やかになるだけだよ)、何軒かのお店と最近掘り当てた天然温泉の「漁り火温泉 おと姫の湯」なんていうのがある。

釜谷地区はっていうと、民宿が何軒かと食堂(というよりラーメン屋さん)が1軒、お土産屋さんが1軒。お昼はその2軒しか食べるところがないので、食堂で「磯ラーメン」っていうサザエがいっぱい入ったラーメンを食べるか、お土産屋さんでやってる立ち食いそば風のそばかレトルトカレーを700円で食べるか、しかない。そのお土産屋さんで、「ヤマザキパン」みたいなパンは売ってるけどね。

そんな本当に何にもないところなんだけど、何にもないところだからこそ学ぶことがあるんだよね。とにかくそこの人たちはいろいろなものを大切にしてる。小さな島だから土地がない。おそらく木を切り倒して畑を作ればできないこともないんだろうけど、そんなことしたら雨水が山からまともに流れて来ちゃうだろうし、山を通して湧いてくるきれいでおいしい水がなくなっちゃう。だから、ほんのわずかな土地を畑にしていろいろな作物を作ってる。もちろんそれを収穫して民宿で出すわけだけど、畑はけっして民宿の近くじゃなくて、かなり急な坂を上っていった山の上の方にあったりするんだよね。
40代くらいの若い(?)女将さんたちは泊まり客の対応に追われているから、畑仕事をしているのは、どうもそういう若い女将さんたちの親の世代、要するにおばあちゃんの仕事らしい。私でもきついと思えるような悪路をそういうおばあちゃんたちが行ったり来たりして畑仕事をしているんだから、これはすごい! そうやって収穫した食べ物が貴重でないはずがない。

前回、ちょっと触れた「わっぱ煮」。
これが名物なんだけど、まあ簡単に言っちゃえば焼いた魚とネギの入ったみそ汁。どこが変わっているのかっていうと、その日に捕れた魚を入れるので魚の種類が決まっていないっていうことと、「わっぱ」の中のみそ汁に焼いた石を直に入れて、ゴトゴトと「わっぱ」の中で沸騰させること。こう言ったらちょっと失礼だけど、魚をいったん焼くので生臭くはないけれど、「おいしい!」っていう感じじゃない。どっちかって言うと「へーっ!」っていう感じ。

でもそれがまた、どんな雑魚でもとにかく捕れた魚は大事に食べるっていうことを教えてくれる。これが限られた食料の中で生きるっていうことなんだなあ…って。
泊まってる民宿のおばあちゃんが、
「今日は鯛が獲れたから、夕飯はご馳走だよ。やっぱり鯛はうめえよなあ」
って言うんだけど、普段スーパーやデパートの魚売り場を見慣れてる私たちにすると、
「えっ、これが鯛? これは店頭にも並ばないような屑じゃん」
まあ、ちょっと大げさかもしれないけれど、そんな感じ。海だからって、伊豆の旅館やホテルで出るような豪華な食事を想像したら、とんでもないことになっちゃう。
鯛の刺身が出れば、みそ汁が鯛のあら汁になるか鯛のかぶと煮がつくかなんだよね。そういう世界。

今年は、孫の蓮(れん)と沙羅(さら)も連れて、総勢9名。孫を連れてお土産屋さんに行ったら、そこのおばさんがとにかくもう、蓮と沙羅をかわいがってくれるわけ。そこから民宿まで歩っていると、また近所のおばあちゃんたちが寄ってきて二人に触りまくる。これがまたなんとも愛おしそうに触るんだよね。粟島のおばさんやおばあちゃんたちは、みな同じ。ビックリするくらい赤ん坊を大事にしてくれる。粟島には赤ん坊がいないんだよ。

こんなに子どもを大事にしてくれる地域が存在していることに、暖かさと寂しさが入り交じった複雑な気持ちで船に乗りました。
今回の宿泊費は、7人(赤ん坊はもちろんただだよ)、のべ14泊で、なんと9万えーん!「わっぱ煮」だって1杯800円で、全部で10杯頼んだのに、いったいどういう計算になってるんだろっ?
「本当にいいんですか?」って何度も女将さんに確かめて、深々と頭を下げて感謝感謝!でした。
もちろん下船の時は、「蛍の光」が流れていたよ。なんだか、どうもドンキホーテで買った安いハーモニカの音みたいだったけどね。


**2003年8月19日(火)掲載**
※カテゴリー「子育てはお好き? ー専業主夫の子育て談義ー」は、2002年より2012年までの10年間、タウン情報サイト「マイタウンさいたま」(さいたま商工会議所運営)に掲載されたものですが、「もう読めないんですか?」という読者のご要望にお応えして、転載したものです。

|

« 第73回「たった400人の島  その1」 | トップページ | 第75回「這えないのに這う沙羅」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第74回 「たった400人の島 その2」:

« 第73回「たった400人の島  その1」 | トップページ | 第75回「這えないのに這う沙羅」 »