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2007年4月 5日 (木)

「日本の親と中国・韓国の親 その3」

(これはマイタウンさいたま連載エッセイコーナー「子育てはお好き? 専業主夫の子育て談義」に連載しているものと同一のものです)

さて、3回目でやっと各論まで行き着きました。
「その1」でも述べたとおり、産経新聞の意図は、「日本の子どもたちは親のしつけがなっていなくて、子どもたちの中にいじめを容認する風土がある」っていうことですよね。もちろんそれは、日本青少年研究所の調査の意図ともつながるわけです。
「日本の小学生は中国や韓国に比べて家庭で注意を受ける割合が際立って低い」「家庭での教育力の低さが浮き彫りになっている」「最近の日本の親は、親と子は別個の存在と考える米国型の価値観に変化してきているため、子供に注意をしないのではないか」「「先生・親の言うことをよく聞きなさい」とよく言われる子供は2割前後で、両国の半分。先生と親の権威低下がうかがえた」などなど、日本は子どもを甘やかしている、と…。
私は、必ずしもそうは言えないと思うんです。注目する質問の項目がどこかということ、加えてその結果をどう見るかということで、それに対する評価が違ってきます。典型は「先生・親の言うことをよく聞きなさい」なんていう項目ですよね。「注意を受ける割合」ということを考えると、文化の違いによる「善」と「悪」の価値観はどうか、そしてその価値観に照らして「子どもたちは注意を受けるようなことをしているのか」が問題になります。まあ、ちょっと皮肉った言い方をすれば、「日本の子どもは、先生からも、親からも注意をされないくらい、いい子なのかもしれない」ということだって言えるわけでしょ。もっとも、「全体的な回答を見て判断しているんだ」といわれるかもしれませんが…。
ここで、調査項目をすべて挙げるわけにはいかないけれど、私はこの調査の結果わかったことは「中国」vs「日本・韓国」という構図だと思います。かたや今まさに経済発展をしようとしている超大国、かたや発展がある程度なされて持続的発展をどうするかという段階の、国土の小さな国という構図ですから、そういう区分けになることは当然です。
とはいえ、それも文化の違いや現在置かれている政治的状況等に埋没して、確実に言えることではないように感じますが。
教育や子育ての根底に儒教的精神が共通して流れている、日・中・韓だけを比べようというところから、すでに世界標準ということにはまったく当てはまらない、つまらない調査なわけです。もし世界的な基準で考えるとすれば、少なくとも、ヨーロッパ、北米、南米、アジア、アフリカというような比較がまずあるべきで、どうしても日・中・韓で比較をしたいのなら、それをふまえてその後に、儒教的精神に基づいた日・中・韓があるべきなんでしょうね。誰だって、今の中国の教育が厳しい国家管理の中に置かれていると感じているのではないでしょうか。今まさに、大きな経済発展を成し遂げようとしている国ということを考えれば、ある意味当然なことです。そこに、日本の教育を戻そうとしている意図が強く感じられますよね。教育の参入への規制は緩和しつつ、教育の中身への関与は強くしていこうという政府の意図までが見え見えです。教育基本法の改正や、つい先日、報道された「道徳」の教科への格上げ問題など、こういう調査に対する発表が、布石になっているわけですね。
さて具体的に調査の結果で私がおもしろいと思ったのは、「朝、洗顔をする」という問いに、「いつもする」という回答が、日本・66.9%に対し、中国・92.8%、韓国・93.7%。ところが、「その1」でもあげましたが、「朝ごはんを食べる」との問いに「いつもする」は、日本・86.3%、中国・84.7%、韓国・62.5%。単純に生活習慣と捉えていることが意外にそうでもない。
日本では、「朝食抜き」の問題が、学力低下の原因の一つとして取り上げられることがよくあります。ところが、この数字を見ると、日本が一番朝食を摂っているわけで、韓国では3分の1以上の子どもが「朝食抜き」ということになる。これを見る限りでは、「日本の子どもの学力が落ちている」ということと、「朝食抜き」は学力低下の原因というのは、矛盾してますよね。しかも「朝食抜き」の原因は、「朝食さえ作らない最近の母親」という問題になっている。
帰宅時間もおもしろい。韓国は15時前が51.4%、15時~16時が33.3%、日本は15時~16時が51.8%、16時~17時が37.0%、中国は16時~17時が44.0%、17時~18時が20.5%。この結果からすると、学校での授業時間が短いという最近の学校教育に対する批判が、必ずしも当たっていないことになる。もっとも、帰宅の時間は質問項目にあるのに、登校の時間はないのですが。
学校への遅刻についても、かなり開きがあります。日本と中国は、「全くない」が過半数なのに、韓国では、「たまにある」「ほとんどない」「全くない」で3分されています。
家庭での生活で興味深いのは、男女の役割。
家事は、日本・韓国で、ほとんど母親の負担であるのにもかかわらず、中国では「ほとんど母親」という回答は、家事のすべてにおいて約半数。どうしてこういうところを産経新聞は取り上げないんですかねえ。これは、家庭での生活を端的に表していると思うんですが。
項目数が多すぎて、すべてを取り上げるわけにはいきませんが、どこを見るかでずいぶん印象が違うもんですよね。
私は、この調査ではっきり言えることはあまりないと思いますが、強いて私流に解釈すれば、国家的な管理の中に置かれている中国に対し、もっとも自由なのが韓国。日本はというと、学校の管理が家庭にまで入り込んでいる部分があること(最近ではさらにそれを推し進めようとしているわけですが)、中国・韓国に比べて、資本主義が成熟していて、消費志向が強いということは言えるのではないかと思います。この結果から、直ちに母親や教師を批判することは到底無理。むしろ、批判されるべきは、教育や子育てにまで入り込んでいる国家の管理や子どもの心を無視した利益優先の財界主導の教育改革だと思うのですが、もしお時間があったら、すべての調査項目に目を通し、皆さんなりの判断をしてみてはいかがでしょうか。

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